JR横浜駅から徒歩5分ほどの場所に、知る人ぞ知る「原鉄道模型博物館」があります。
ここは世界最大級の精巧なジオラマがあるということで有名な博物館です。日本国内だけではなく、噂を聞きつけて海外から訪れる人もいるという鉄道マニアにはたまらない場所。
私も2月に初めて行ってみました。とにかく見て驚きの連続! しかも、もともとは個人で製作し所有する私設博物館だったとか……。コレクションは原信太郎さんが自作したというおびただしい数の鉄道車両の模型が並んでいて、そのこだわりと存在感には圧倒されるばかりです!
今回はその「原鉄道模型博物館」の魅力と見どころに迫ってみました。
INFORMATION
名称 | 原鉄道模型博物館 |
住所 | 神奈川県横浜市西区高島1-1-2 横浜三井ビルディング 2階 |
面積 | 約1,700m² |
開館 | 2012年7月10日 |
製作 | 原信太郎 |
営業時間 | ※営業時間変更あり | 10:00~17:00(チケット販売終了16:00/最終入館16:30)
休館日 | 年末年始、2月上旬(館内保守点検) | 毎週火曜日・水曜日(祝日の場合は営業し、翌営業日に振替休館)
料金 | ●平日 大人 1,200円、中学・高校生 900円、小人(4歳以上)600 円 ●土日・祝日・繁忙期 大人 1,300円、中学・高校生 1,000円、小人(4歳以上)700 円 |
問合せ先 | 045-640-6699 ※休館日を除く10:00~17:00 |
HP | https://www.hara-mrm.com |
原鉄道模型博物館の凄さ
夢とロマンが詰まった場所
この博物館の模型製作、コレクターであった原信太郎さん(1918〜2014)は文具メーカー・コクヨの専務時代に、画期的な物流システムを導入した技術者としても知られた人だったようです。
原さんの鉄道マニアとしての歴史は長く、何と12歳のときには最初の鉄道模型『自由形電気機関車8000号』を完成させたのでした!
すでにこの頃から本物思考が強く、市販の材料で済ませたのは車輪とプレートぐらいで、あとは材料をすべて自分で調達して組み立てて完成まで漕ぎつけているのです。
おそらくこの体験は、その後の創作への意欲や情熱をかき立てるきっかけとなったのかもしれませんね……。
熱烈な鉄道マニアで、その入れ込みようも普通の趣味やファンの次元をはるかに超えています。
新幹線や東京のあらゆる地下鉄も乗車第一号としての記録が残っているし、車両の雄姿をカメラや16ミリに収めるために国内はもちろん、世界中の鉄道を訪れた数は枚挙にいとまがありません。
これほど生涯をかけて打ち込める趣味があるというのは本当に幸せ以外の何ものでもないし、まさに夢とロマンの体現そのものではないかと思いますね。
妥協なしの模型製作
まず驚くのが模型の精巧さ! 「模型」という言葉の響きから、どうしてもプラモデルの延長ぐらいに考えてしまいがちですが、とんでもないですね……。
何といっても模型を完成させるために、装備から体裁、走行するシステムに至るまで本物と同じ工程を積み重ねていく徹底ぶりが尋常ではありません。
この壮観な模型を見ながら、ちょっと面影が重なったのがウォルト・ディズニーです。
スケールの違いこそあれど、自分の夢を実現するためには1ミリたりとも妥協しない姿は、どことなくディズニーの姿を彷彿とさせますね……。
本物を追求した素材と技術
模型作りも趣味の延長レベルではありません。
一般的な鉄道模型はレールにしろ、車両にしろ、それらしい素材(真鍮など)で代用するのでしょうが、原さんの場合はまったく違ったのです。
実物が鉄製の車両であれば、模型もそのまま鉄を使い、パンタグラフの電気モーターを使った駆動形式をそのままとり入れて走らせるなど……、こだわりようが半端ではなかったのでした。
こだわりが詰まった展示内容
圧倒的なジオラマ
一般に公開されている室内施設としては世界最大級のジオラマがここにあります。
原模型は、鉄道車両が実際の街並みを走るようすをイメージして作られています。そのリアルな佇まいに息をのむことでしょう!
架線に電気が流れて、パンタグラフが電気を取り込み、それを車両のモーターを回転させて動く……。まったく普通の電車の走行と同じ原理です。
そのため製作には高度な知識や技術が要求され、本物の車両、鉄道と同じようにレールや架線のメンテナンスも欠かせません。
本物が持つ存在感が凄い
こだわりは走行や外見だけではありません。
たとえば本物の車両と同じように、外側にある扉や窓はすべて開閉できるし、車内からのレバーによる開閉も可能になっているのです。
それだけでなく運転室の手動制御機のハンドルをまわすと、鎖が巻き上げられて、各台車のブレーキ装置が作動してブレーキがかかります
パンタグラフも単なる飾りではなくて、シリンダーが内蔵されていてちゃんと動くようになっているのには驚きです!
リアルな走行音
まずジオラマコーナーで驚くのがリアルな走行音ですね。
あの枕木のつなぎ目を踏みしめて走る「ゴトンゴトン」という音が本物そっくり(いや本物のミニチュア版といえばいいのでしょうか…)なのです!
ギアやベアリング、ブレーキなど、本物の鉄道で使われている技術が惜しみなく搭載されているため、リアルで存在感のある音が実現したのでしょう。鉄道マニアも、そうでない人もこの音にはきっとひきつけられるに違いありません。
時間帯の表情を映し出す
人が生活する空間は時間帯によってさまざまな表情を映し出しますよね。
このジオラマも朝〜昼〜夕方〜夜の微妙に変わる街並みのようすを臨場感豊かに映し出しています。特に夜から夜明けにかけての神秘的な雰囲気は最高です。
街並みを駆け抜ける列車の走行も、何ともいえないロマンを感じますね。
人間模様
館内のスタッフさんから教えられて面白さに気づいたのが、ジオラマに点在する街並みの景観と、キャラクターを映し出す人物のフィギュアですね。
ここに登場するフィギュアはそれぞれが表情豊かで、なにか日々の一コマを切りとったような雰囲気があって、ついつい感情移入してしまいそうです。
街角で立ち話をする人たち、相談にのっているのか、悩みを聞いているのか、何やら深刻な話をしているような雰囲気……。
貴重な展示資料
原さんは「撮り鉄」としても徹底していて、報道カメラマンが愛用することでも有名なライカのカメラを戦前からずっと使用してきました。各時代のライカの機種も展示されています。
小学校の高学年頃から、国内各地に出かけ、30代後半からはほぼ毎年、海外を旅してきました。鉄道の技術革新があると聞けば、世界のどこへでも訪れて実際に乗車し、カメラや16mmフィルムに収めています。
海外出張・旅行のもう一つの目的は、模型店めぐりです。
店に入ってしまうと、すっかり模型のことで夢中になってしまうため、そのときは会社の上司を待たせようが、夫人をほったらかしにようが関係なかったようですね(笑)。一番切符をめぐるエピソードも心底好きでなければありえないような奇想天外なものもあって、ここまでくると凄いと微笑ましくも感じてしまいます……。
世界の鉄道コレクション
珍しいところでは、ドイツの鉄道模型会社・メルクリン社が1901年に製造した、ヴッパータール市の懸垂式モノレールでしょう。
電気で動く模型が出始めた頃のもので、配電盤には脱線時のショート防止の電球もついています。
これは1980年代に原さんがオークションで競り落としたというエピソードのある模型。状態が非常に良く、ヴッパータール市博物館から譲ってほしいとの申し出があったほどです。
「オリエント急行」は、鉄道にさほど関心のない方でも、アガサ・クリスティの推理小説や映画などで馴染みのある列車ではないでしょうか。『動くホテル』と言われるように、木製の車両は優雅で気品に満ち溢れており、時間と空間を楽しみ、贅沢なひとときを味わう旅には最高の空間だったのでしょう。
この模型はイタリアのレンツォ・ドット―リ製のもので、比較的初期の木造の食堂車です。食堂車の天井をくり抜いて室内のようすが見られるのが印象的ですね。19世紀後半から20世紀初頭の華麗なヨーロッパ文化を漂わせる凝った内装が垣間見れます。
一番チケット
鉄道模型だけでなく、一番切符の収集にも情熱を燃やしていました。
開業した路線が発行する最初の切符のことで、ふつうは開業初日に列の先頭に並ばないと入手できない。それが何十枚と展示されており、もはや執念のきわみ。
1964年の東京オリンピック時に開通した東海道新幹線の指定席一番切符もあるが、ひかり1号、1号車、1番座席というこだわりよう。
まとめ
「原鉄道模型博物館」は誰が訪れてもワクワク感が味わえるのが最大の魅力ですね!これが大人でも子供でも楽しめる要因になっているのでしょう。
何回足を運んでも、その都度違った面白さを味わえるかもしれませんね。
最後に「原鉄道模型博物館」の他にはない魅力と特徴をまとめてみました。
「原鉄道模型博物館」の魅力と特徴
- 原信太郎が物流革命の技術者だったため、鉄道に対しても常に技術者の視点で向き合っている
- 世界中の鉄道車両を再現したコレクション
- 本物の鉄道車両を忠実に再現している。模型は架線から電気をとり、鉄のレールを鉄の車輪で走行する
- 珍しい車両や貴重な資料が見られる
- 横浜駅から5分の至近距離で立ち寄りやすい