パンなどの小麦食品を食べると、何ともいえないだるさや体の不調を訴える人が一定の割合でいるといわれています。これはどうしてなのでしょう?
お腹の不調といえば、「FODMAP」という言葉も聞いたことありませんか? FODMAPが高い食品を摂りすぎると、腹痛や下痢を引き起こしたり、お腹にガスが溜まりやすいと言われていますね。「FODMAP」については後ほどくわしく説明いたします!
それではパンなどの小麦食品や、FODMAPの摂取について真剣に考えていきましょう!
小麦を食べるとお腹が張る原因
小麦を食べるとお腹が張る原因には諸説ありますが、おもに次のような原因が考えられますね。
小麦粉
パンの主原料である小麦粉には、小腸で消化・吸収されにくい「フルクタン」という糖質が含まれています。
フルクタンは、大腸まで到達すると腸内細菌によって発酵される際にガスが発生します。そのため、過剰摂取すると、腹部膨満感、腹痛、下痢、おならなどの症状を引き起こしやすくなってしまうのです。
FODMAP
小腸で消化・吸収されにくい糖類をFODMAPといいます。腸内で発酵しやすいため、ガスが生み出されて腹部膨満感の原因となります。
FODMAPはあらゆる食品に該当しているため、これを避けるのはなかなか難しい状況ともいえるでしょう。
グルテン

小麦にはグルテンという成分が含まれています。実は小麦粉の成分で最も厄介なのがグルテンといっていいでしょう。
グルテンは、小麦などに含まれるタンパク質の一種で、水を加えてこねると粘り気や弾力が生まれるのが特徴です。パンや麺類のもちもち感やふんわり感を作る働きがあります。
ただし、人によっては腸に影響を与えるため消化しにくく、グルテンを避ける「グルテンフリー」の食生活を選ぶ人もいます。
グルテンがなぜ厄介なのか?
グルテンが厄介とされる理由はいくつかありますが、大きく分けて「消化・吸収への影響」「アレルギーや過敏症」「慢性的な体調不良との関連」があります。以下にくわしく説明していきましょう。
消化しにくいタンパク質である
グルテンは、小麦などに含まれる「グリアジン」と「グルテニン」というタンパク質が水と結びついて形成される構造物です。この構造が強固で、消化酵素では完全に分解しにくく、腸に負担をかけやすいとされています。
アレルギーや自己免疫疾患に関与
セリアック病1という自己免疫疾患では、グルテンを摂取することで腸に強い炎症が起こります。
セリアック病でなくても、非セリアック・グルテン過敏症2の人は、グルテンを摂取すると頭痛、疲労感、膨満感などの症状を感じることがあります。小麦アレルギーもグルテンが関係することがありますね。
リーキーガット症候群を引き起こすことがある
グルテンは腸の粘膜を刺激し、腸の壁の透過性(バリア機能)を弱めることがあります。これにより、未消化のタンパク質や毒素、病原菌が血中に漏れ出す「リーキーガット症候群(腸漏れ)」の原因になると考えられています。
現代の小麦はグルテン含有量が多い

昔の小麦よりも、現代の品種改良された小麦はグルテン含有量が増えており、パンなどがふわふわになりやすい一方で、過剰摂取につながりやすいという懸念もあります。
モチモチ感を生み出すということは、味わいや食感からしても絶好の素材です。したがってグルテンが含まれる食品も幅広いのが現実ですよね。
たとえばパン、パスタ、うどん、ラーメン、お好み焼き、天ぷらや揚げ物の衣など……。日常でよく口にする食事に多く含まれているのは知っている人も多いかもしれません。
依存性の可能性
一部の研究では、グルテンの分解によって生成される「グリアンドルフィン」などのペプチドが、脳に作用して中毒的な快感をもたらす可能性も指摘されています。パンやパスタが「やめられない」一因と考えられることもあります。
FODMAPとは何か?
FODMAP(フォドマップ)とは、特定の種類の炭水化物の総称です。
これらの炭水化物は小腸で消化・吸収されにくく、大腸に到達すると腸内細菌によって発酵し、ガスを発生させたり水分を引き込んだりして、お腹の不調(膨満感、ガス、下痢、便秘など)を引き起こすことがあるのです。
FODMAPは、以下の4つの糖類の頭文字を取ったものです。
Fermentable(発酵性)Oligosaccharides(オリゴ糖)Disaccharides(二糖類)Monosaccharides(単糖類)And Polyols(ポリオール類)
FODMAPの略
- Fermentable(発酵性)
- Oligosaccharides(オリゴ糖)小麦、たまねぎ、にんにく、豆類に含まれる
- Disaccharides(二糖類)牛乳、ヨーグルトなどの乳製品(ラクトース)に含まれる
- Monosaccharides(単糖類)果物(特にリンゴ、スイカ、蜂蜜)に多く含まれるフルクトース
- And
- Polyols(ポリオール類)キシリトール、ソルビトール(人工甘味料)、りんご、ももなどに含まれる
FODMAPが高い食品の例
炭水化物 | 小麦、ライ麦、大麦、パン、ラーメン、パスタ、うどん、そうめん、とうもろこし、ピザ、お好み焼き、たこ焼き、ケーキ、パンケーキ、焼き菓子 |
野菜 | 玉ねぎ、にんにく、カリフラワー、アスパラガス、セロリ、マッシュルーム、ねぎ、さつまいも、らっきょう、ごぼう、ニラ、豆類、納豆、小豆、絹ごし豆腐、キノコ類 |
果物 | リンゴ、なし、マンゴー、チェリー、イチジク、スイカ、ドライフルーツ、桃、プラム、さくらんぼ、あんず、グレープフルーツ、ライチ、さくらんぼ、いちじく |
乳製品 | 牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム、ミルクチョコレート、プロセスチーズ、クリームチーズ、プリン |
たんぱく質 | ソーセージ、加工肉、魚の缶詰 |
ナッツ類 | ピスタチオ、カシューナッツ |
調味料など | ハチミツ、キシリトール、カレーソース、オリゴ糖、バルサミコ酢、トマトケチャップ、バーベキューソース、カスタード、わさび、きな粉 |
飲み物 | アップルジュース、マンゴージュース、オレンジジュース、ウーロン茶、ハーブティー、カモミールティー、ハチミツ入りジュース、エナジードリンク |
FODMAPが低い食品の例
炭水化物 | 米、玄米、米粉、オートミール、オート麦、そば、タピオカ、ポップコーン、ビーフン、フォー、タコス |
野菜 | にんじん、ピーマン、カボチャ、きゅうり、ほうれん草、ジャガイモ、大根、なす、トマト、ブロッコリー、大根、木綿豆腐 |
果物 | キウイフルーツ、バナナ、パイナップル、オレンジ、レモン、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、クランベリー、ぶどう、ライム、ココナッツ |
乳製品 | アーモンドミルク、バター、マーガリン、モッツァレラチーズ、パルメザンチーズ、カマンベールチーズ |
たんぱく質 | 卵、ベーコン、ハム、肉類、魚類 |
ナッツ類 | ヘーゼルナッツ、栗、くるみ、ピーナッツ |
調味料など | マヨネーズ、ソース、酢、メープルシロップ、ココナッツオイル、味噌、オリーブオイル、魚油、カレー粉、唐辛子、バジル |
飲み物 | 紅茶、コーヒー、麦茶、緑茶、レモンジュース、ライムジュース、クランベリージュース、ココア、ビール、水、日本酒 |
FODMAPの低い食事療法は、過敏性腸症候群(IBS)の方やおなかが緩くなりやすい方のための新しい食事療法として注目されています。
FODMAPは小腸で吸収されにくい発酵性糖質の総称で、FODMAPを制限する食事スタイルを「低FODMAP食」といいます。低FODMAP(Low FODMAP)食事法を実践すると、腸内のガスや膨満感が軽減され、過敏性腸症候群(IBS)や腸の不調が改善すると言われています。
小麦食品はFODMAPが多い
小麦粉や小麦を使ったパン、パスタ、ラーメン、うどん、そうめん、ピザ、お好み焼き、シリアル、 ケーキなどは、FODMAP(フォドマップ)が特に多い食品です。
FODMAP食のポイント
小麦より米を選ぶようにする

小麦が除かれたパン(グルテンフリーのパン)や、米粉でできたパンや麺(フォー、ビーフンなど)を選ぶのも一つの方法でしょう。手軽に始めるなら、「小麦製品を米に置き換える」「乳製品を植物性ミルクにする」「人工甘味料を避ける」などから試してみるのもアリですね!
FODMAP食のメリット
過敏性腸症候群の緩和、腸の快適さの向上、自分に合わない食品がわかる。
- 過敏性腸症候群(IBS)の症状軽減:腹痛、膨満感、ガス、下痢や便秘といった症状を改善することが期待できます。
- 腸内環境の安定:ガスの発生が減るため、腸内での圧力や不快感が軽減され、生活の質が向上します。
- 食事が症状に与える影響を把握できる:除去と再導入の段階を経ることで、自分に合わない食品が明確になります。
FODMAP食のデメリット
食事制限が多い、栄養バランスが偏りやすい、専門知識が必要。
- 食事制限が厳しい:一時的に多くの食材を避けなければならず、外食や家族との食事にストレスを感じることがあります。
- 栄養バランスの偏り:果物、野菜、乳製品などが制限されるため、栄養素(特に食物繊維やカルシウム)が不足するリスクがあります。
- 長期実施は推奨されない:FODMAPは腸内の善玉菌の餌でもあるため、長期間の除去はかえって腸内環境を悪化させることも。
- 自己流での実践は危険:専門家の指導なしに始めると、効果が得られないばかりか、栄養不良になる恐れがあります。
日常でできる改善方法
FODMAP食を実践するのは、決して簡単ではないことが分かりました。それではどうすればお腹の不調を改善できるのかを考えてみましょう!
「気づき」と「記録」が大事

お腹の調子が悪い場合は、どのような時に、何を食べた後に不調をきたすのかを考えてみるとよいでしょう。パンや小麦粉を控えてみることで改善する場合があるかもしれません。
偏った食事は腸内の悪玉菌が増える原因になりやすいので、できるだけバランスの良い食生活を心がけましょう。
食べたものと症状の記録を1〜2週間つける
- 「昼にパンを食べたら2時間後にお腹が張った」など。
→ スマホのメモやノートでOK。どの食品が原因か見えてきます。
「高FODMAP食品」を一度見直す
まずは高FODMAP食品と低FODMAP食品の種類を、大まかにでも知ることが必要でしょう。下の表は高FODMAP食品と低FODMAP食品を振り分けたものです。参考にしてくださいね。

高FODMAP食だから避けるとか、すべてを除去するのではなく、「自分にとって合わないもの」や「怪しいものを少し減らす」考え方が大切でしょう。
1日1つずつ「置き換え」から始める
いっぺんに低FODMAP食に置き換えようとするのではなく、段階的に低FODMAP食に変えていく試みも必要でしょう。
置き換えの例
- 朝食の小麦パン → 米粉パンやバナナと卵のパンケーキに
- にんにくの代用 → にんにく油(にんにくは除いて香りだけ)を使う
- 牛乳 → ラクトースフリー牛乳やアーモンドミルクに
腸内環境を整える工夫も大事
もし、小麦食品を摂取すると毎回お腹が張る、ガスが出るなどの症状が現れる場合は、医療機関を受診し、医師に相談することをおすすめします。
腸内環境を整える例
- 発酵食品は人によって合う合わないがあるので、少量ずつ試して → 味噌、ぬか漬け、甘酒(無加糖)など
- 水分をしっかり摂る→ ガスの排出や便通の改善に有効です(1.5~2L/日目安)
- 軽い運動やストレッチ → 腸の動き(蠕動運動)を促すため、腹部の張りが改善されやすくなります
慣れてきたら「段階的FODMAP法」も視野に

除去と再導入の段階を経ることで、自分に合わない食品が明確になります。
症状の原因となるFODMAPを減らす
食品群を一つずつ戻してみて、反応を見る
自分に合った食べ方を見つけていく
➡ 栄養士や医師と一緒に行うのが理想ですが、自己管理でもある程度可能です。
FODMAP食のポイント
- 一度に完璧を目指さず、「少し減らす」「置き換える」だけでも効果あり
- お腹の張りやだるさは、体質や腸内環境によって人それぞれ。焦らず試行錯誤を
- FODMAP制限は、自分にとって「過敏に反応する食品」を知る手がかりと考える
日常的に取り入れやすい「低FODMAPレシピ」
それではシンプルで日常的に取り入れやすい「低FODMAPレシピ」を、3つご紹介しましょう。
鶏むね肉とズッキーニの塩レモンソテー(主菜)

材料(2人分)
- 鶏むね肉:1枚(約250g)
- ズッキーニ:1本
- オリーブオイル:大さじ1
- レモン汁:大さじ1
- 塩:小さじ1/3
- ブラックペッパー:少々
- にんにく風味をつけたい場合:にんにくオイル(少量)
作り方
鶏むね肉はそぎ切りにして軽く塩をふる。ズッキーニは輪切りに。
フライパンにオリーブオイル(またはにんにくオイル)を熱し、鶏肉を焼く。
火が通ったらズッキーニを加えて炒め、最後にレモン汁を全体的にかける。
ブラックペッパーで仕上げ。
➡ 低糖質・高タンパク・爽やかな味付けで、胃もたれもしにくい!
おかゆ風やさしい「米粉雑炊」(軽食や朝食)

材料(2人分)
- 白ごはん:お茶碗1杯(100g)
- 水:300ml
- 卵:1個
- にんじん:少量(千切り)
- ほうれん草:少量(ゆでて刻む)
- 塩:少々
- 鰹節 or 出汁パック(FODMAPに配慮されたもの)
作り方
鍋に水とごはん、にんじんを入れて中火にかける。
柔らかくなったら卵を割り入れ、ほうれん草を加える。
塩で味を調整する。
➡ お腹に優しく、腸が疲れているときにぴったりの一品。
ツナときゅうりの米粉マヨサラダ(副菜)

材料(2人分)
- ツナ缶(水煮 or オイル漬けを軽く切る):1缶
- きゅうり:1本(スライスして塩もみ)
- マヨネーズ(FODMAPに配慮したシンプルなもの):大さじ1.5
- レモン汁:少々
- ブラックペッパー:少々
作り方
きゅうりは塩もみして水気を絞る。
ツナときゅうりをボウルで混ぜ、マヨネーズとレモン汁を加えて和える。
好みでブラックペッパーを振る。
➡ 火を使わずすぐできる!パンの代わりにおにぎりと一緒にどうぞ。
まとめ
いかがでしたでしょうか?お腹の張りを訴える人は周囲にもたくさんいます。しかし抱える症状はそれぞれ違うし、体質や持病の有無が大きく関わることもありますよね。
そう考えると簡単に「お腹の張りにはこうするべき」とは軽々しく言えないです。とは言っても小麦食品やFODMAPを意識すると、かなり体調の変化が現れるのも事実。
まずは自分のできるところからチャレンジしていくのは良い試みだと思います。無理をせず、少しずつ継続することで一定の成果が出ることにつながるようになるでしょう!