本当の自分との出会い。自分らしく生きるための鍵「感性」

私たちは生活の中でよく「感性」という言葉を使います。しかし、どれだけの人がその言葉を理解しているのでしょうか?

「あの人は感性が豊かだね」というと、ちょっとした褒め言葉としても受けとめられますが、「感性が乏しい…」と言われると、立ち直れないほどのショックを受けたりします。

それは「感性」が持つ特殊性からくるものが大きいのでしょう。今回は人の生き方にも大きく関わる「感性」について見ていきます。

目次

感性の正体

「感性」はよく聞く言葉ですが、どうもとらえどころがないものにも感じます。それでは感性にはどのような特徴があるのでしょうか? 

環境や経験によって育まれる

「感性」というのは決してセンスや才能ではありません。

日常生活の積み重ねや経験などで、次第に育まれたり、感じる心が「感性」です。物事を表面的にとらえるだけでなく、さまざまな角度から深く見つめられたり、感じとれる能力といってもいいでしょう。

感性が豊かな人の視点

これは決してすぐに身につくものではなく、育った環境や経験などを通じて、人格形成と結びついて作りあげられるものといってもいいかもしれませんね。

たとえば子供が親の愛情を素直に感じとれるとしたらそれは素晴らしいことです。ただしその愛情をどのように感じているかは人によって千差万別です。「無条件で包み込んでくれる人」なのか、「何でも願いをかなえてくれる人」なのか……。

愛情の受けとめかたや、価値観が違ってくるのも感性によるものが大きいといえるでしょう。

学校では教えられない領域

学校で道徳や倫理などの授業を受けることもあるでしょう。 しつけやマナーなども時間を割いて学校で教えられることがあるかもしれませんね。

しかし「感性」だけは学校で教えることは不可能でしょう。なぜなら「感性」はあらゆる発想や情感などの根の部分に位置しているからです。

「実体があるようでない」、「共有するのが難しい」などのように、説明をするのも難しい「心に感じる世界」だからなのです。

脳の働きと密接な関係

人は生まれ育った環境も違うし、同じような経験をしても、受けとめ方、感じる心はまったく違います。

たとえば次のような例があります。

狭い歩道を歩いていたら、逆方向から男性が歩いてきた。このままだとぶつかってしまうので、身体を半身にして通りやすくしてみた。だが男性は何事もなかったかのように通り抜けていった。

このままだと「ぶつかってしまう、通れない」と感じた人が、とっさに身体を斜めにしたということですよね。このことに対して一概にどちらがいい、悪いということはいえません。一つ言えるのは同じことを体験しても、人によって受けとめ方に大きな差が現れるということです。

脳は起こった出来事をどのように感じたかを分析したり、記憶して整理する働きがあります。これには感性の働きが大きく関わっています。

次のような例もあります。

相性があわない人と仕事を一緒にするようになった。最初は意見が対立して大変だったけれども、プライベートな話をしたのがきっかけで歩調が合うようになり、仕事が楽しくなってきた。

やりとりを通して思考がマイナスからプラスに転換された例ですね。最初は気まずい状態であっても、地道に相手とコミュニケーションをとる、親しく話を続けることで、脳に肯定的な感情が生み出され、「いい情報だ」と認識するようになったのでしょう。

脳が肯定的にとらえることで心身にプラスの影響が与えられ、それが次第に感性として定着するようになるのです。感性と脳の働きは密接に関係しているといってもいいかもしれませんね。

あらゆる行動の原動力

「感性」はあらゆる行動のエネルギー、原動力になります。

そのエネルギーは物事を達成したり、成功を引き寄せる大きな力が潜んでいるといっても過言ではないでしょう! なぜなら「感性」は人から言われてやるような義務的なものとはまったく異質のものだからです。

何よりも出発点が喜びやワクワク感という、クリエイティブで建設的な発想が動機になっているからです。何としても成し遂げたいという強い意志の力や目的意識があるのです。

それだけに失敗したとしても、新たに挑戦したり、やり直せる下地を充分に残しているともいえるでしょう。

自己肯定感が高いと感性が育つ

自己肯定感と感性は切り離せない関係があります。自己肯定感は、人と自分を比較しないし、結果に一喜一憂することもありません。つまり確固とした自分の軸が根底にあって、ぶれない考え方を持っているのです。

残念ながら「感性」は受け身的な考え方や悲観的な発想の中では、なかなか育ちませんね。

自分軸がしっかりしている自己肯定感

自己肯定感の高い人は自分の尺度で物事をしっかり見極め、本質に迫ることができます。発想も柔軟だし、一つの定石にとらわれることもありません。その結果、他の人にはない自由な発想を思い描くことができるのです。

自己肯定感の高い人こそ、「感性」も育ちやすいといえるでしょう。

感性が役立つ場面

生活の中で感性が役立つ場面はどのようなものがあるのでしょうか? 具体的に見ていきましょう。

相手の気持ちに寄り添える

気分の悪くなった人が目の前で倒れてしまったとします。こんな時あなたならどのように対処しますか? また混雑した電車でお年寄りが目の前に立った時どう対応するでしょうか? 

感性が豊かな人はとっさに動く、動こうとする場合がほとんどです。気持ちが先立つのですよね……。仮に何もできなかったとしても励ましたり、声をかけようとするでしょう。

周りで人が見ているとか、一切関係ありません。困っている人の状況を他人事とは思えない共感力が身体に染み込んでいるのです。

芸術作品の鑑賞

芸術を形だけでなく、心の眼で感じとれれば、きっと人生に奥行きが生まれるでしょう。

そう、芸術を理性で理解しようとしても無理があるし、あまり意味がありません。特に芸術は「感性」で直感的に作品の本質を理解するものです。それは決して理屈云々ではないですよね。

クラシック音楽が何百年のもの間、廃れることなく現在も作品が演奏され、引き継がれているのには理由があります。

ベートーヴェンの交響曲、ピアノ曲は指揮する人、演奏する人によってまったく違った良さ、味わいが生まれる。感性によってオリジナリティのある音楽が無限に創造されるからだ。

発信するほうも、受けとるほうも感性の働きで、はじめて作品が持つ美しさを実感できるし、感動を共有できるのです。絵画もまったく同じですね。

ゴッホの『糸杉』の迫力は言葉に表せない。厚塗りの絵の具のタッチや狂おしいほどの情熱、生命を削りながら無我夢中で描いたと思われる余韻と感動は到底写真や印刷物では再現できないだろう。

ゴッホ『糸杉』1889年、メトロポリタン美術館

審美眼

感性が豊かになると、絵や音楽を鑑賞するとき、自分の感性のアンテナで絵の良さ、音楽の素晴らしさを判断できるようになります。他の人の評価などに惑わされず、自分で作品の持つ素晴らしさや、本質をキャッチできるようになるといってもいいでしょう。

たとえば、「この作品は有名な音楽評論家、美術評論家が評価しているから素晴らしい」ではなく、自分の感性で作品の良さや魅力を堪能できます。本当に美しいもの、自分の感性がしっくりくる芸術を追い求めようとするのです。

自分の体験を重ね合わせる

感性は実体験や抱いていた感情を作品に重ね合わせることで共感が生まれます。たとえば、愛する人を失った経験のある人が、癒えない哀しみをテーマにした音楽を聴くと、その音楽に強く共感するようになります。

味わう作品が、自分の体験した心境に近いものであればあるほど、その感動は深いものになるでしょう。

感情の共鳴

感性は感情と深く結びついています。つまり「うれしい」「悲しい」「楽しい」などの喜怒哀楽ですよね。悲しいメロディを聴いたり、暗い色調の絵を見たりすると、悲しみや憂鬱な気持ちが引き起こされることがあります。

これは感性が作品の持つ世界観や感情をすばやくキャッチして、それに共鳴するからです。

コミュニケーション

会話をするとき、話をしようにも「話のネタがなくて……間が空いて困ってしまった」。そんなことはないですか? あらかじめ話すことを準備したつもりだったのに、「半分も話せなかった」という人もいるかもしれませんね。

しかし「感性が豊かな人」というのは、初めて会った人でも不思議と会話がはずむものです。これはどういうことでしょうか……。

ひとことでいえば、彼らは、場の雰囲気を盛り上げる貴重な存在といえるでしょう。大抵は話の内容がありきたりではありません。他の人とまったく違う視点で、オリジナリティあふれる提案をすることが多いのです。

話し方も相手を気づかったり、自然体で話をするので嫌味がありませんし、なごやかな雰囲気で進行します。したがってミーティングなどが暗くなったり、重苦しい空気が漂うことがないのです。

企画・アイディアの提案

感じる心、能力は仕事にも大きな力を発揮します。

たとえばショールームの開設などの企画案の場合、設計・施工や交通、立地条件などの数字や概要を提案するのが一般的でしょう。

しかし感性の豊かな人だったら、「お客様が訪ねて実際に気持ちいいと感じてくれるのか」「特別感を持ってもらえるのか」などのように、実際に自分が使った場合の率直な感覚、顧客ありきの立場で提案します。

創造性を駆使して、誰にでも具体的でわかりやすく、目に見えるようなイメージを提供することになるでしょう。

感性を深めるポイント

日常で「感性」を深めるにはいくつかのポイントがあります。それを見ていきましょう。

好奇心・関心を持つ

「好奇心、関心を持つ」ことは脳を刺激し、細胞を活性化させます。当然、好奇心、関心があることは「好き」にもつながりますよね。

未知の領域に足を踏み入れることで、今までの自分になかった新たな感覚が啓発されるし、確実に心の幅が広がるでしょう。このことが、「感性」を深めることに直結するのです。

感性を深めるには、何よりも「夢中になれる趣味」を持つことが一番でしょう。そのためにも、さまざまなことをかじってみるのもいいことですよね。

新しいことにチャレンジ

「もう年だからこんなことをしても意味がない」、「自分には向かないからやめておこう」。このように考えることはありませんか?

もしそうだとしたらあまりにもったいない話です。自分の限界や能力、可能性はやってみないとわかりません。しかし「無理だ」とあきらめてしまったら成長もないし、意識変革もできないかもしれないですよね。安全策やマンネリは感性を麻痺させます。そして老いを早めるとも言われます。

「関心がある」、「気になる」そう思うことはどんどんチャレンジすべきでしょう!新しいことにチャレンジすることで自分にフレッシュな空気を取り入れることになるし、体験することでそのことに対する感性が少しずつ芽生えていきます。

また脳にもいい影響を与えるでしょう。「こんなに楽しいものだとは思わなかった」「最高の感動体験をした」。そのように感じられたら次につながり、発展していくに違いありません。

経験と積み重ね

先ほど感性は脳との関係を切り離して考えることができないと言いました。

たとえばゴルフのクラブやアイアンを触ったことのない人がゴルフのプレイをしたとします。最初は基本がなってないし、フォームもバラバラで、スコアも散々でしょう。

しかし「好きでたまらない」、「絶対に上手になりたい」という強い気持ちや飽くなき向上心があれば、時間の経過とともに驚くほど上手になります。

プラスの発想で経験を積み重ねていくと、それが脳との相乗作用で眠っていた感性が呼び覚まされ、身体に染み込むようになるのです。失敗やハプニングなどもプラスに発想を転換できれば、成長や感性の定着につながるようになるでしょう。

偏見を捨てる

感性を育むうえでネックになりやすいのが「偏見を持つ」ことです。「井の中の蛙、大海を知らず」ということわざがあるとおり、「偏見を持つ」ことで感性がしぼんでしまう可能性も少なくないですよね。

そのためにも「これはこうであるはず」とか、「ねばならない」という意識は捨てなければなりません。思い込みで物事を見つめると、見える世界が急速に狭まってしまいますよね。

「違った考えかたもあるかもしれない」などのように視点を変えたり、立体的に物事を見つめる習慣をつけることが大切でしょう。

自然に親しむ

自然は疲れた私たちの心を癒やしてくれる見えない力があります。時間軸で動いている普段の生活では気づかない発見がありますよね。

時間がとれない人は、ゆっくり散歩をするのもオススメです!会社のお昼休みや、休日の穏やかな時間帯でもいいでしょう。

新鮮な空気を浴びることはもちろん、外気に触れるだけで季節の移り変わりを肌で感じるかもしれません……。光や風、空気、気候、季節の風物詩、街角の雰囲気、すれ違う人など……。

歩くうちに心に刻まれた数々の印象は脳が記憶します。そしてそれは感性となって育まれていくのです。

POINT 感性を深めるポイント

  • 夢中になれる趣味があると、感性が深まるきっかけになる。
  • 新しいことにチャレンジし、フレッシュな体験をすることで感性が芽生える。
  • プラスの発想で経験を積み重ねていくと、脳との相乗作用で眠っていた感性が呼び覚まされ、身体に染み込む。
  • 偏見を持たないで、視点を変えたり、立体的に物事を見る習慣をつけることが大切。
  • 散歩などで外気に触れる機会を持てば、季節の移り変わりを肌で感じられる。
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