最近何かと「感性」という言葉を耳にしませんか?
「感性」は分かるけど、言葉の意味がもうひとつピンとこないという方もいらっしゃるかもしれませんね……。
「感性が鋭い」「細やかな感性」などのように使われたりしますが、感性の持つ意味、大切さとはいったい何なのでしょうか?
そして感性を磨いていくと生活にどのような変化や影響が現れるのかを詳しく探っていきたいと思います。
感性とは?
私は感性こそ人間の感情の中で最も大切で、何よりも身につけるべき感覚・能力だと思っています。
感性=センスとして捉えられることも多いため、ごく一部の人が持つ特殊な才能やスキルに思われがちですが、決してそんなことはありません。
基本は美しいものを心から美しいと感じたり、おいしいものを率直においしいと感じるような、ごくごく当たり前の感じる力が感性なのです。
感性とは?
- 感性は特別な能力やセンスではない。
- 物事や行動などに対して素直に心が動き、感じる力、表現する能力。
学校では教えてくれない
感じかたは人によって性質が違うし、とらえかたもレベルも違います。
たとえば、同じ物を見たり・食べたりなどの同じ体験をしても、感じる世界は十人十色でまったく違います。
熱い、冷たい、痛いという身体的な感覚は人それぞれだし、悲しい、うれしい、心地いい、といった心に刻まれる感覚も当然違ってきますよね。そのため感性を「こうだ!」と定義づけることはとても難しく、もちろん学校で感性についての説明を受けることもないでしょう…。
また育った環境や辿ってきた人生、経験なども感性を育むことに大きく影響します。
誰も感性について教えてくれない
- 同じ体験をしても感じる世界は人によってまったく違う。
- 育った環境、経験や実感した世界が感性を育むことに大きく影響。
- 心に強く刻まれる出来事は感性を育む
平凡な日常の繰り返しではなく、気づき、発見、うれしかったこと、悲しかったこと……などのように、心に刻まれる出来事は感性を育む上で大きな影響を及ぼしやすいのです。
感性に年齢、性別は関係ない
感性は持って生まれた特別な感覚だと思われがちです。しかし決してそんなことはありません。
80代のおじいちゃんには、おじいちゃんなりの感性があるし、3才の女の子には3才の子なりの感性があります。
「幼児だから難しいだろう」とか、「男性だから鈍いんじゃないの…」と言う方もいますが、そういうことはあまり関係ありません。年齢や性別も一切関係ないですよね。
その人が持つ個性や経験・出来事、さまざまな要素が絡んで感性が芽生えたり、深まったりするのです。
その気があれば誰でも感性を磨くことは可能です。また感性を磨くことで人生を何倍も豊かにしていくことができるのです。
感性が豊かな人とは
「感性が豊かな人」って、いったいどのような特徴があるのでしょうか?
感じるレベルや多様性もあるので、判断がとても難しいですが、それでも次のような人たちは、「感性が豊か」といってもいいかもしれませんね。
心の動きを大切にする
私たちは行動するときに、それぞれがポリシーを持って行動しています。
その一つに「規則だからそのとおり従う、習慣だからいつもどおりに行動する」という決まったパターンに忠実という人がいますね。
それに対して、「気持ちが納得しないと行動しない」という人もいます。また規則やルールが定まっていても、どうしても納得できなければ確認したり、相談するという人もいます。
行動するパターンと感性の働き
- 規則だからそのとおり従う、習慣だからいつものように行動する。⬅︎心の動きと関係ない
- 気持ちが納得しないと行動しない。規則やルールでも納得できない場合は確認や相談をする。⬅心の動きに忠実
「心が納得しないと行動しない」というのは一見わがままなようですが、実は自分の心の動きに忠実なだけなのです。もっというならば心が伴わないところには身体がついていかないともいえるでしょう。
感性が豊かな人は、「気持ちが納得しないと先へ進めない」という人が少なくありません。
したがって納得して、気持ちが向かいさえすれば最高のパフォーマンスを発揮したり、人間関係においても信頼関係を構築したり、コミュニケーションが親密になったりするのです。
人の心に寄り添える
感性が豊かな人の特徴としてよく挙げられるのが、「人の心に寄り添える」ことです。
目の前で苦しんでいる人を見ると放っておけない人のことですね。他者の喜び・苦しみ、悲しみもまるで自分のことのように思える……。
このような人たちは、「自分だったらどんな気持ちだろうか」というように、すべて自分に置き換えて物事を考えるのです。
ともすれば「自分のことで精一杯で、他人に心配りなんてできない」と皆が開き直ってしまったら、殺伐とした潤いのない社会になってしまいますよね。
もちろん、ちょっとした気遣い、心配りも寄り添う気持ちの表れといっていいでしょう。
本質を見抜く力がある
現在ネット上にはさまざまな情報が溢れています。そして情報は日々更新されています。情報過多社会と言われるゆえんですが、残念ながら人を陥れるような悪意に満ちた情報も蔓延していますね……。
感性が鋭い人はサイトの情報が本当に信頼すべきものなのかどうかということや、目的がいったい何なのかということについて敏感に察知することに長けていますね。
文脈やキャッチフレーズ、レイアウトの色調などからも、必要な情報なのかどうかを的確に判断します。
嘘の情報や、あたかもそれらしく装った情報に惑わされることなく本質を見極めることができるのです。
上辺だけでなく、深くものを見つめる感覚が優れているため、人間関係においても打算的ではない本質的な交流ができるようになるでしょう。
豊かな発想・アイディア
「無から有を生み出す」とよく言いますよね。
何もないところから価値あるものを生み出す能力はとても貴いことです。しかし発想やアイディアも、その元となる経験と熟練によって蓄えられた引き出しをたくさん持っているケースが多いといえるでしょう。
デザイナーが提示した企画案を見て、「えっ!?どうしてこんな発想が出てくるの…」と驚いたり、感心したことはありませんか?
クリエイティブな仕事に携わる人はもちろん、クリエイティブ感覚に優れた人たちは、「どうしてそのアイディアが出てきたのか」、「その作品をなぜ作ろうとしたのか」ということに対して明確なビジョンを持っている場合が多いのです。
柔軟な考え方ができる
固定観念を持つことは、感性を育む上で大きな妨げになります。
たとえば絵を描いている幼児に対して、「空は青く着色するんだよ」、「雪は塗らなくていい」。こんなふうに決まりごとであるかのように言ってしまいやすいものですよね。
「こうすべき」、「それはダメ」という思い込みや固定観念は行動パターンや発想そのものを狭めてしまいます。
仮にそうだったとしても、「自分で確認してみる」とか、「自由に観察する」という大事な工程がおろそかになってしまいやすいのです。
その子がどんなに才能があったとしても創造の芽を摘むことになってしまうかもしれません……。
しかし感性が豊かな人は柔軟な発想、考え方ができます。さまざまな可能性を考えて、あらゆる手立てを尽くして最善の方法を模索しようとするのです。
感性を育むには
感性を磨いたり、育むことに一定のルールや法則というものはありません。
ただし育まれる傾向が強い、いくつかのパターンもあります。ここではそれについて見ていきたいと思います。
経験を積む
「以前はこんな気持ちになることはいっさいなかったのに…」
ママになりたてのお母さんがよくこんな話をしますよね。「独り身のときは子供が可愛いなんてあんまり思わなかった。でも今は子供が愛おしくて仕方がない」と……。
自分のお腹を痛めて生みの苦しみを味わったからこそ言える偽りのない心境なのでしょう……。
経験はときとしてその人の価値観を変えたり、成長のための大きなステップになったりします
経験することをきっかけに、心が啓発されて感性が育まれるようになるのです。
心をオープンにする
感性を育むために最も必要なのはこれかもしれません。
心をオープンにすることで、今まで気づけなかったものに気づけるようになるのです。
それは視野が広がり、見える世界が違ってくることです。それと同時に、自分の心の受け皿が自ずと拡がることも大きいでしょう。
意固地になったり、自分一人で物事を考え続けていると、いつか必ず行き詰まってしまいますよね。
適切なアドバイスを受けたり、協力を受けるだけでまったく違う発想や考え方が出てきます。「なるほど、こういう考え方もあったのか…」と認識を新たにする瞬間ですね……。
すべては心を開くことで、「どうしたらいいんだろう」とか「こうすべき」という発想が自然と湧いてくるのです。
できるだけ何も描かれていない白いキャンバスのように、どのようなスタイルにも馴染めるような柔軟な心を持つべきでしょう。
新しいことにチャレンジする
苦しい時や、挫折しそうな時というのは気持ちが沈んでしまうし、できればそっとしてほしいものですよね。
ただしコインの表裏のようにピンチとチャンスは表裏一体です。ほんのわずかな発想の違いによって結果が大きく変わるのです。
こんなときこそ新しいことにチャレンジすると発想が転換されたり、気持ちをリフレッシュすることができるでしょう。
生活がマンネリ化する、パターン化するというのは心身の成長や細胞の活性化にも良いとはいえません。
気持ちを前向きにすることでピンチをチャンスに変える名案が浮かぶことがあるし、難しい状況をすべてカバーする発想が降り注ぐことだってありますから…。
本物にたくさん触れる
文学、絵画や音楽などの傑作、名作といわれる作品をたくさん鑑賞し、堪能することも感性が磨かれ、育まれるきっかけになります!
いわゆる傑作と呼ばれる作品は崇高な精神性や人生観が込められていたり、心を動かすメッセージ性にあふれていますよね……。
芸術性が高い作品に触れる機会が多くなると、次第に作品を通じてさまざまな角度から人生の本質を垣間見ることもできるようになります。
関心を持って深く作品に触れることで、より感性が磨かれ、審美眼も身につくことでしょう。
動物や自然と触れあう
動物と戯れたり、自然に親しんだり……。
感性を育むのにこれほど適した要素はないかもしれません。それは心を通わせ、愛情を注ぐことで、癒やしや喜び、うれしさ…。さまざまな感情が心に宿るようになるからです。
たとえば犬や猫などのペットを育てる苦労や経験は忘れられない思い出に変わっていくでしょう。それは植物の鉢植え栽培やガーデニングなども同じかもしれませんね。
自分とかかわりを持ち、同じ時間を共有する中で、手間がかかること、失敗すること、成長を見守ることの一つ一つが唯一無二の特別な時間となるのです。
何よりも心の幅を拡げて、感性を育むことにもつながっていくでしょう。
感性がもたらすメリット
感性が豊かになると、どのようなメリットがあるのでしょうか? それは生活の中に無限にあふれていると言っていいかもしれません…。
ここでは主なメリットについて見てまいりましょう。
的確な判断ができる
感性が育まれると冷静な判断ができるようになります。
それは心にゆとりが生まれるので、目先の判断だけでなくこれからのことや将来を見据えて立体的に物事を考えられるからです。
善悪の判断はもちろん、自分が今置かれた状況の中で何をすべきなのかを明確に判断することができるようになります。
円滑なコミュニケーション
感性が育まれると、見える世界、感じる世界が確実に変化します!
それには物事を素直な眼で見つめられることが大きいからですね。
虚栄心で自分を飾りたてないし、人と素直に対応しようとするのであらゆる人とのコミュニケーションがはかどります。
「自分が自分が…」という目先のものしか見れない状態から、俯瞰で物事を見渡せる心のゆとりが出てきます。
自分が社会という共同体の中で、持ちつ持たれつという、「補いあう関係」が明確に意識できるようになるのです。
毎日が新鮮で輝いて見える
私たちは日常の見慣れた光景や生活空間で感動したり、心動かされることはあまりないかもしれませんよね。
ところが、経験が積み重ねられ、感性が磨かれ深まると突如としてキラキラと輝いて映る事があります。またワケもなく涙がこぼれることもあります。
特に周囲が変わったわけではないのに、美しく見えるのは自分の心持ちが明らかに変わってきたからといえるでしょう…。
詩人やエッセイストが物事を詩的な眼や心で深く見つめることができるのと同じ境地かもしれませんね!
健康を害して、長期入院を余儀なくされる時も気持ちは沈み、お先真っ暗になってしまいます。でも療養に耐え、無事に回復したとき、人は健康の尊さを身にしみて感じるのです。
また災害で停電したとき、不便さ、大変さを実感するのですが、復旧して電気がついたときの感動も言葉にできません。
共通していえるのは、何でもない日常のありがたみを心底実感できたときですよね。
審美眼が身につく
感性がもたらす大きな効果として見逃せないのが、「審美眼が身につく」です。
感性が豊かになると、ピアノ演奏へのこだわりとか、着眼点、芸術に対する価値観、捉え方も大きく変わります。
たとえば「絵がきれい」とか、「上手に描けている」、「ピアノの演奏がめちゃくちゃうまい」のような見ばえやテクニックなどよりも、「何を伝え、どう表現するのか」という芸術の本質や核心の部分を追求するようになるのです。
感性が深まると世間の評価に振りまわされないで、自分の感性のアンテナで絵の良さ、音楽の素晴らしさ、本質を味わうことできるようになるのです。
機転がきくようになる
一般的にサービス業では接客マニュアルがあります。でもこれは、「お客様をお迎えしたい」、「心よりくつろいでほしい」という気持ちやサービス精神旺盛な人が実践して効果が出るものですよね。
感性が磨かれ深まると、自分がどのように対応すれば人から支持されるかを自ずと察知できるようになります。
それはマニュアルどおりではない、臨機応変に人に合わせたきめ細やかなサービスや対応が可能だからなのです。
そのことがお客様や友人から「今日は来て良かった…」と喜ばれ、信頼を勝ち取ることができるようになることは間違いありません。
まとめ
感性は特別な才能ではなく、経験や心に強く残る出来事などを通して培われていくものだということをご理解いただけたでしょうか。
とにかく感性は非常に奥が深い内容のため、一度だけで定義づけるにはちょっと無理がありますね…。今後も何回かに分けて感性について考えていきたいと思います。閲覧ありがとうございました!