フランスの芸術の象徴、パリを代表する観光スポットであり、年間800万人以上の人が国内外から訪れるというルーブル美術館。
所蔵作品数は30万点を数え、名作、名品が目白押しです。誰もが一度は訪れたいという羨望の眼差しで見られることが多い世界を代表する美術館ですよね。
予約の方法や館内のフロアマップなどの詳細な情報は観光ガイドにお任せするとして、ここではルーブル美術館の主な特徴や見どころに絞ってご紹介いたします!
Information
●名称 Musée du Louvre
●開設 1793年8月10日
●面積 60.600㎡(敷地面積72,735㎡)
●常設展示 38,000点
●撮影 カメラやビデオ撮影はOK。フラッシュ撮影はNG。
●開館 9:00-18:00(休館・火曜日)
●入場料 17ユーロ
●公式サイト www.louvre.fr/jp
●Instagram @museeloubre
歴史
もともとはフランス国王の王宮として使用されていたルーヴル宮殿でしたが、1682年にルイ14世が王宮としてヴェルサイユ宮殿を選んだのが始まりでした。
その後ルーヴル宮殿は、1692年以来収集されてきた古代彫刻などの王室美術品コレクションの所蔵や展示場所と性格を変えていったのです。
ルーブル美術館の開館
フランス革命によって大きく歴史が動く。憲法制定議会の可決で、ルーヴル宮殿は大衆に開かれた美術館へと変貌。ルイ16世の投獄後、所蔵していた美術コレクションは国有財産となった。
ルイ16世の処刑1周年にあたる1793年8月10日に開館。当時のコレクションの75%が王室の美術コレクションで、残りは他国に亡命した貴族やローマカトリックから押収したものだった。
ナポレオン美術館へ名称変更
1803年にナポレオン美術館に改名され、スペイン、オーストリア、オランダ、イタリアなどの美術品が多数所蔵されるようになる。
ナポレオンが政治の実権を握る。この頃から、美術館はヨーロッパ諸国との戦利品でコレクションがあふれることになる。
コレクションが充実
ルイ18世やシャルル10世の統治下で、ルーヴル美術館に135点の美術品が追加された。古代エジプト美術を扱う部局も編成され、7000点以上の美術品を購入。
ナポレオン三世の第二帝政期にルーヴル美術館の所蔵品は増え続け、2万点を超える美術品が集められた。建築家ルイ・ヴィスコンティらによって大展示室などが改装された。
戦火を離れて避難
580点ほどの傑作絵画を収集した「ラ・カーズ・コレクションが遺贈される。1863年に発掘された古代ギリシアの彫刻『サモトラケのニケ』がルーヴル美術館へと収められ展示される。
第二次大戦の影響で主要な作品はすべてルーヴル美術館から姿を消し、各地に避難する。1945年にフランスが解放されると作品は美術館に戻された。
大ルーヴル計画の断行
1980年代には当時のミッテラン大統領の「大ルーヴル計画」の推進により、建物の大幅な改築が実施される。展示スペースを2倍に増設するとともに、1988年にはナポレオン広場のエントランスにガラスのピラミッドが設置された。
地下のショッピング・モールに、採光も兼ねた逆ピラミッドが完成した。
2000年以降ルーヴル美術館の入場者数が激増し、入場するためには長い行列ができるという問題があった。ナポレオン広場の広大な地下エントランスの完成はその問題を解決に導いた。
美術館の特徴・見どころ
荘厳な建築が芸術品
ルーブル美術館を含めた「パリのセーヌ河岸」は、1991年に世界遺産に登録されています。特にルーブル美術館はフランスの歴史を語る上で絶対に外せない重要スポットといえるでしょう。
絵画や工芸品、彫刻も凄いのですが、何より圧倒されるのが建物そのものが芸術品として充分な価値を持つことです。かつては歴代のフランス国王が王宮として使用していたルーブル宮殿。
歴代の王によって3世紀近くにわたって改築・増築が施されたため、バロック様式とルネサンス様式が入り混じった建築物となっています。
膨大なコレクション
ルーヴル美術館には現在38万点にのぼる美術品が所蔵されています。
おそらく質量ともに世界一を誇る美術館として認定することに異議を唱える人はいないでしょう。
もちろん、すべてを展示することは不可能ですが、そのうちの35,000点が8つのカテゴリーに分類されて展示されています。
人類文明の歴史が俯瞰できる
ルーブル美術館は美術館である以上に人類の歴史と文化の一大殿堂と言ってもいいでしょう!
古代エジプト文明や、メソポタミア文明、ギリシャ文明、ローマ文明など、人類起源の文化の所産が8つのカテゴリー別に見ることができます。
そのどれもが歴史的に見ても、極めて貴重な記録ばかりと言えるでしょう。
歴史の教科書や文献の資料でしか目にすることができなかった歴史的財産が目の当たりにできるのは圧巻です!
8つのカテゴリー
古代エジプト美術
古代エジプト美術部門には、ナイル川流域に発展したエジプト文明の、紀元前4000年から4世紀までの5万点以上の美術品が所蔵されています。エジプト美術コレクションとしては世界最大規模と言えるでしょう。
古代オリエント美術
1881年に創設されたセクションで、イスラム教が世界に普及される前の古代オリエント文明の美術品が収蔵されています。
古代ギリシア・エトルリア・ローマ美術
新石器時代から6世紀のローマ帝国衰退までの、地中海沿岸地方の美術品を収蔵しています。最も古いセクションのひとつで、王室コレクションの所蔵品や、フランソワ1世が購入した美術品も含まれています。
『サモトラケのニケ』(紀元前190年ごろ)や『ミロのヴィーナス』のようなヘレニズム文化の名作が所蔵されています。
イスラム美術
2003年に創設されたもっとも新しいセクションです。コレクションは、陶磁器、ガラス、金属工芸品、木製品、象牙工芸品、絨毯、織物、ミニアチュールなど。
彫刻
古代ギリシア・エトルリア・ローマ美術部門以外の、1850年以前の比較的新しい彫刻が収蔵されています。ミケランジェロの『瀕死の奴隷』と『抵抗する奴隷』が特に有名です。
装飾工芸品
中世から19世紀半ばまでの美術工芸品が収蔵されています。
フランス王室コレクションと、サン=ドニ大聖堂からフランス革命時に持ち出された作品が基礎となっています。中でも宝石や貴石を散りばめた絵画のような壺と青銅器は豪華絢爛。
絵画
7,500点を超える絵画作品が所蔵されています。
13世紀から1848年までの作品がコレクションされています。絵画作品のうち、およそ70%がフランス人画家の作品で占められています。
素描・版画
おもにデッサン、パステル画、ミニアチュール、版画、本、写本、書簡、リトグラフなどが収蔵されています。8,600点にのぼる王室コレクションが基礎になっています。
必ず見たい絵画
ルーブル美術館を訪れるからには、ぜひ見ておきたい絵画があります。特に以下の作品は必見ですね。
モナ・リザ
レオナルド・ダ・ヴィンチ
(1503-1506年、油彩)
La Gioconda 1503-1506/Leonardo da Vinci
「モナ・リザ」はもはや説明が必要ないほど有名な絵画。
ルネサンスを代表する絵画であると同時に、いつの時代も人を惹きつけてやまない名画中の名画だ。神秘的で謎に満ちた絵の雰囲気もそのひとつだろう。
あらゆる部分が完璧な技法で成り立っていて、存在感も微動だにしない。かすかな笑みを浮かべているようにも見えるモナ・リザの極めて繊細で深遠な表情が印象的。
美しき女庭師
ラファエロ・サンティ(1507年、油彩)
La Belle Jardinière 1507-1508/Raffaello Santi
小品でありながらも、ルーブルのあらゆる大作に勝るとも劣らない輝きを発している作品がラファエロの『美しき女庭師』。
この絵に描かれた愛情と気品にあふれた描写は、画家の繊細で深い洞察力が生きた最高の賜物だ。
ダビデ王の手紙を手にしたバテシバ
レンブラント・ファン・ライン
(1654年、油彩)
Bathseba met de brief van koning David 1654/Rembrandt van Rijn
この絵のモデルはレンブラントの晩年を精神的に支えたへンドリッキェではないかといわれている。
バテシバの苦悩に苛まれる美しい表情が何ともいえない!哀しみに満ちた表情の奥に垣間見える優しさや奥ゆかしさ……。
心の動きや葛藤が昇華した美しい絵であり、人物の内面の感情を高貴に表現し尽くしたレンブラントの力量は見事。
グランド・オダリスク
ドミニク・アングル(1814年、油彩)
La Grande Odalisque 1814/Dominique Ingres
最初はルーブルから所蔵を拒絶された絵でした。
19世紀前半のアカデミックな絵画を主張する関係者やサロンからは「モデルのスタイルがおかしい」と批判もされたが、デッサンの達人アングルにとって、それは計算ずくのこと。
視覚のインパクトを利用した絶妙なデフォルメの技法で、アングルは来たるべき時代を席巻するようになるのだった。
食前の祈り
シメオン・シャルダン(1744年、油彩)
Le Bénédicité 1744/Jean Siméon Chardin
シャルダンの絵の凄いところは、家族を描いた絵でも単なる風俗画の領域にとどまらないところだ。
この絵でも静謐で穏やかな日常に、ちょっぴりユーモラスな表現が加えられていて、それが絵の中で無理なく溶け合っている!
母と二人の娘のやりとりがなんと微笑ましく愛情に満ちあふれていることだろう。アカデミックな古典的スタイルをベースにした、優雅で気品あふれる描写がとても魅力的。
メデュース号の筏
テオドール・ジュリコー(1818年、油彩)
Le Radeau de la Méduse 1818-1819/Théodore Géricault
この絵は、当時社会的な問題になった1816年のメデューズ号座礁事件の顛末を描いたものだった。
容赦なく襲いかかる風や高波の恐怖、尋常ではない人々のようすがリアリスティックなタッチと異様な緊迫感をもって伝わってくる……。
衝撃的なインパクトを与えるこの絵は、画家自身が事故の現場を訪れたり、生存者に当時の状況を詳細に確認したりするなど綿密な下調べをして描いたという。
ナポレオンの戴冠式
ジャック・ルイ・ダヴィッド
(1805-07年、油彩)
The Coronation of the Emperor and Empress 1805-1807/Jacques Louis David
正式名称は『皇帝ナポレオン一世と皇后ジョゼフィーヌの戴冠式』。フフランスの歴史に刻まれた「ナポレオンの戴冠式」のようすを描いたことが大変に貴重で、価値を高めていると言っても過言ではない。
ナポレオンの権力を誇示するように描かれた壮大な儀式の威容と絵の巨大さが圧巻!
ダビッドはこの絵を完成させるのに3年を費やし、強い意気込みとともに苦労のほどが伺えるよう。ナポレオンの後方に位置どるローマ教皇、ローマ教皇庁の人々の一様に蔑んだような表情が印象的……。明らかに身内や家臣との表情とは対照的だ。
民衆を導く自由の女神
ウジェーヌ・ドラクロワ(1830年、油彩)
La Liberté guidant le peuple 1830/Eugène Delacroix
この絵はフランス7月革命をテーマにしている。まさにフランスの激動の歴史を今に伝える生き証人のような絵画!
国旗を持って人々の前に立ちはだかる女性が強いアクセントになっている。安定感のある構図をベースに、人々の激情が伝わってくるような彩度の高い色彩も印象的。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ルーブルは「一日ではもちろん、一週間でやっと美術館を見られるのでは……」と言われるほど、スケールの大きさと密度の濃さに圧倒されるとも言いますよね。
ほぼ概略のみになってしまいましたが、ルーブル美術館の魅力がちょっとでも伝わったならば幸いです。