数年に渡る長いコロナ禍で心も身体もすっかり疲弊してしまったという方は少なくないでしょう。
旅行に行きたいが感染対策が何かと面倒で、すっかり腰が重くなってしまったという方や、外食も心ゆくまで楽しめない……。という方も大勢いらっしゃいます。
そんな中で心身をリラックスさせながら、身体の柔軟性を取り戻す「ストレッチ」は、まさに時代の要請にあったものなのかもしれませんね。
今回はストレッチの魅力と効果について触れていきたいと思います。
ストレッチとは?

ストレッチは正式な名称をストレッチング(stretching)といいます。ストレッチ(=ストレッチング)とは筋を伸ばす柔軟体操のことです。
1975年にアメリカのボブ・アンダーソンが『STRETCHING』という書籍で、身体の柔軟性を高める運動の一環として静的なストレッチを提唱してから急速に世界中に拡がったのでした。
そもそもストレッチは 身体にあまり負荷をかけずに、リラックスさせたり疲れをとったり、体調を整えるなどの目的で行われます。
ストレッチの種類
一口にストレッチと言ってもストレッチにはいくつかの基本スタイルがあります。
自分一人で手軽にできるものや、動きを伴うものなどさまざまですね。大きく分けると、次の4種類に分けられるでしょう。
スタティックストレッチ(静的)
基本的に自分で行い完結するものです。筋肉をゆっくり30秒ほど伸ばす場合が多く、生活のあらゆるシーンで気軽に行えます。
故障のリスクが最も少ないスタイルといえるでしょう。

ダイナミックストレッチ(動的)
ゆっくりと大きな動作で筋肉を伸ばすストレッチで、運動前によく行います。関節可動域を広げる効果が長続きしやすいといわれ、反動を用いません。

バリスティックストレッチ
リズミカルに反動をつけて行うのがバリスティックストレッチです。反動をつけて筋肉を伸ばすため、瞬間的に可動域が広がります。
ただし、やり過ぎるとケガの原因になりやすいので注意が必要でしょう。
パートナーストレッチ

文字どおり2人1組で行うストレッチです。
単独のストレッチでは伸ばしにくい筋肉も、パートナーにストレッチをお願いすることで可動域が広がり十分に伸ばせるようになります。
信頼できるパートナーであれば、身体を安心して任せられるため、無駄な力を入れずに理想的なストレッチを行えるメリットがありますね。
また身体の歪みや筋肉のこわばりを見つけて修正してもらえるため、課題を改善しやすいです。
どんな効果があるのか?

ストレッチを行うと、どんな効果があるのでしょうか?
ここでは最も取り組みやすい静的ストレッチ(スタティックストレッチ)の場合について見ていきたいと思います。
体調が安定する
しなやかで柔軟性のある筋肉を獲得すると、正しい姿勢や理にかなった動きが普通にできるようになります。すると、極端に負荷がかかる身体の部位がなくなります。
そのため頭痛、肩こり、腰痛のような不調が自然と解消され、快適な生活が送れるようになるのです。
けが予防になる
ときどき階段の段差でつまづいたり、つまづきそうになったりしませんか?
このケースで考えられるのは、可動域(段差を越える柔軟性)はあるものの、筋肉をうまく動かせていないことがあげられるでしょう。
可動域はもちろん、正しい筋肉の動きを実感することは、自分の身体の状態をしっかり把握することにもつながります。
そのことがとっさの転倒や打撲などによる外傷を防げるようになるといえるでしょう。
免疫力が向上
ストレッチは筋肉を緩めることを主としていますが、自分を見つめ、身体と対話するまたとない瞬間でもあります。習慣化させて、正しい姿勢、正しい動きがとれるようになれば、血液の循環がスムーズに促されるだけでなく、心身の健康も取り戻せるようになるでしょう。
血流が良くなることで、正常な体温を保てるようになり、免疫力は大きく向上しますね。
太りにくい体質に

普段動かない、動くのがつらい身体でも、正しい可動域や動きが獲得できるようになると、生活や行動が変わります。
たとえば普段エスカレーター、エレベーターをしか使わない人が、「階段にしてみよう」など、身体を動かすことが楽しみにもなるのです。必然的に運動量も増えるようになるでしょう。
さらに、モチベーションが上がるとエネルギーを効率よく消費できるようになるので、代謝がアツプして太りにくい身体になるのです。
睡眠の質が上がる

ストレッチの習慣が身につくと、身体をリラックス状態にする副交感神経が優位になります。
お休みになる30分ほど前に行うと、リラクゼーション効果を高め、心身の緊張を解きほぐすため、自然と良質な睡眠が得られるようになるのが実感できるでしょう。
身体を温め、筋肉を緩めることで血流がよくなることに加えて、リラックスした状態で自然な眠気につながっていきます。
ただし筋力トレーニングや腕立て伏せのような猛烈なストレッチは交感神経を目覚めさせ、逆効果になってしまいますね……。
ゆっくり自分のペースで気持ちの良いところを確認しながらストレッチを行ってみましょう。





パフォーマンス向上
日々のストレッチの習慣で筋肉が柔らかくなると、次第に関節の可動域が広がり、手足を大きく動かせるようになるでしょう。
すると動き自体も癖のないスムーズなものに変化します。このことが、疲れにくく、エネルギーを効率よく消費できる身体へと近づけてくれるのです。
もちろん、持続力、敏捷性や運動能力も大きくアップするでしょう。
ストレッチで意識したいこと
ストレッチと筋トレの違い
「筋トレ」は言うまでもなく、筋肉トレーニングの略称で、筋肉に負荷をかけて鍛えることを目的としています。
一方「ストレッチ」は筋肉を解きほぐし、身体の柔軟性を高めることを目的にしています。
ストレッチでは筋力アップは望めませんが、確実に身体の柔軟性を伸ばすことができるでしょう。
ストレッチに最適な時間は?

ベストの時間帯は入浴後や就寝前ですね。
身体が緊張した状態ではなく、リラックスしているタイミングで行うほうが絶対にいいです。何といっても筋肉が緩みやすいし、無理なく血流が促されて身体が温まりやすいですよね。
そのほうが継続しやすいし、効果は高まりやすいでしょう。
1回のストレッチは約30秒くらいで、回数を繰り返すことで筋肉がほぐれやすくなるのが一般的ですね。
どれくらいの頻度で?
筋肉をゆっくり伸ばす静的なストレッチは毎日実行しても何ら問題ありません。落ち着いた雰囲気でゆっくりと筋肉を伸ばしましょう。
仮に毎日でなくとも週に3回以上行う場合も、ほぼ同じ効果を得られると考えていいでしょう。
ただし、すぐにでも可動域を広げたい、どうしても開脚ができるようになりたいという場合は、毎日行うことをおすすめしますが……。
まずは無理せず、ストレッチを生活に定着させようと考えたほうがいいかもしれませんね。
今日からできるストレッチは?
ここまでストレッチのさまざまなメリットを紹介してきましたが、要は続けることに大きな意味があります。
ここでは手軽に出来て続けやすいストレッチを少しだけご紹介しましょう!
腕のストレッチ

①片腕を前に伸ばして、手のひらを正面に向けます。もう片方の手で指先をつかみます。
②ゆっくりと自分に向けて手のひらを引っ張ります。
③角度を少しずつ下に向けながら20秒ほど行いキープします。
④手を入れ替えて同様に行います。
何かとスマホを触ることが多い昨今、手や腕は思った以上に張っているものです。
このストレッチは、手をまっすぐ前方に伸ばすのではなく、斜め下に向けて手を伸ばすのがポイントです。
入浴後の筋肉がやわらかくなっている時や就寝前などのリラックスしたタイミングで行うと良いでしょう。
股関節ストレッチ

①床に仰向けになり、片方の膝を胸につけるようにして抱えます。
②その状態をキープして深く呼吸します。
③慣れてきたら左右に少し揺らしてみます。
④左右の足を交互に10〜15秒ほどで数回おこないましょう。
左右に少し揺らすことで、股関節のつまりがどれくらいのものか実感できるでしょう。
つまった感じがある場合は、お尻の筋肉が固まっていることが多いので、お尻のストレッチとセットで毎晩行うといいでしょう。
お尻ストレッチ

①床に足を伸ばして座ります。
②片足を伸びている片方の足にクロスさせながら跨ぎます。
②クロスさせた足を外側から腕で押しあてながら、身体をねじるようにします。
③その状態で深く呼吸をしながら、お尻を伸ばします。
④およそ15秒ほど行ったら、左右を入れ替えます。
ねじりを深くして、視線の位置を後ろにおくとさらにお尻が伸びる感じがするでしょう。
また押しあてる腕の位置を調節したり、上体が前に倒れないように意識することも効果をあげる大切なポイントですね。
まとめ
いかがだったでしょうか。
ここで一言つけ加えておきたいのが、筋トレとストレッチは性格や目的が違うということです。
筋肉に負荷を与えて、運動効果をあげるにはやはり筋トレだし、リラックスしながら自分のペースでやるにはストレッチがいいでしょう!
身体の状態を把握しながら、どちらがいいかはご自分で決めるものです。
一時的ではなく、継続してベストなタイミングで行うのが効果をあげることは間違いないでしょう。