腎臓はよく「沈黙の臓器」などと言われます。
心臓や肺、胃腸などに比べても、腎臓がどんな働きしてるのかは分かりにくいですよね……。病気になっても症状が出にくいのがちょっとやっかいだし、それこそが「沈黙の臓器」といわれるゆえんかもしれません。
でも身体において腎臓がはたす役割はとても大きく、他の臓器や病気、体質の影響も受けやすいし、とにかくデリケートでナイーブなのです……。
今回は腎臓の働きから、腎臓機能の異変や、その対処方法について見ていきたいと思います。
https://image.moshimo.com/af-img/2872/000000048905.png腎臓の機能と働き
腎臓の位置
腎臓はおへその両脇あたり、左右の両側に1個ずつあります。
こぶし大の大きさで、重さは1個150グラムほどで、そら豆のようなかたちをしています。
腎臓の働き
腎臓は身体にとって必要なものだけを血液として送りだし、不要なものは尿として排出するろ過装置のような役目があります。
腎臓にはネフロンという組織が無数にあり、その中にある一つ一つの糸球体がフィルターのような役割をして尿がつくられます。まさに隠れた身体の調整役といってもいいでしょう!
尿をつくりだす
腎臓は血液から、身体にとって必要なものと不要なものとに分けています。不要な老廃物や余分な水分、塩分などを尿として排泄します。
体内のバランスを調整
身体の中の水分量、細胞の活性化に必要なナトリウムやカリウムのようなイオンバランスを適正に保ったり、血液の酸性・アルカリ性のバランスを調節したりします。
絶えず体内を最適なバランスに調節する機能があります。
血圧のコントロール
血液中の水分量を一定に保つことで、血圧が高くならないように調節を助ける役割もあります。血圧をコントロールするという面では、血圧の上昇を抑えるレニンというホルモンを分泌しています。
慢性腎臓病の判断基準は?
慢性腎臓病は今や国民の8人に1人が該当するといわれています。したがって誰もが気にかけなければならない病気ともいえるでしょう。
慢性腎臓病を判断する基準は、「尿検査」や「血液検査」の結果が一つの目安となります。
注意したいのは、尿検査でのたんぱく尿と血液検査での血清クレアチニン値のどちらか1つが該当しても慢性腎臓病とみなされるところです。
また血液中のクレアチニン値、年齢、体重などから算出された推定値、e-GFRを用いて腎臓の状態を複合的に評価しなければなりません。
以下の腎機能測定ツール(日本腎臓学会)であなたの腎臓の状態を確認してみましょう。
※一般社団法人日本腎臓学会より
尿検査「1+」
健康診断の尿検査でタンパク尿などの尿の異常(+)が認められる場合は注意が必要です。尿タンパク1+以上が長く続く場合は慢性腎臓病を疑ってもいいでしょう。
タンパク尿は透析を必要とする末期腎不全への進行だけではなく、心筋梗塞などの虚血性心疾患の原因にもなる動脈硬化を引き起こす危険な要因ですね。
血液検査「e-GFR60未満」
GFRも健康診断で血液検査を受けたときに目にする項目ですよね。e-GFRとは推算糸球体ろ過量のことです。
これは糸球体がどれだけ円滑に機能しているのかを示す数値になります。
血清クレアチニン値から算出した正常値は推算糸球体ろ過量(e-GFR)の数値が60mL/分/1.73㎡未満になります。これ以下の状態が3か月以上続くようであれば、慢性腎臓病を疑ってもいいでしょう。
腎臓悪化の症状
腎臓が悪化した場合、具体的にどのような症状が出てくるのでしょうか。ここではおもな症状についてあげてみました。
自覚症状が出にくい
腎臓は、「沈黙の臓器」といわれ、病気がかなり進行しないと自覚症状が出てきません。
ステージ2では、すでに糸球体のろ過機能が低下していますが、自覚症状はほとんどないため、異常に気づくのはステージ3あたりからが多いようです。
しかしステージ3になると健康時と比較して、ろ過機能が50%ぐらいまでに低下しているので、すみやかに医療機関を受診しなければならないでしょう。
尿が泡立つ(タンパク尿)
本来は糸球体のフィルターでろ過されて、通り抜けられないはずのタンパク質などが尿として排出されるようになります。
タンパク質の量が多い尿はよく泡立つのが特徴です。
倦怠感、動悸、息切れ
腎臓の機能が低下すると、赤血球が減る傾向が強くなります。
赤血球は身体中に酸素を運んでいるヘモグロビンが含まれていて、赤血球が減少するとヘモグロビンも減ってしまいます。
すると、酸素が体内に行き渡らなくなってしまい、立ち上がっただけでクラクラしたり、ほんの少しの動作でも息切れがするといった症状が現れるようになります。
身体のむくみ
血液をろ過する糸球体に何らかの支障が起こると網目が詰まってしまいます。
すると腎臓からスムーズに身体の外へ排泄できなくなり、体内に余分な水分や塩分が残ってしまいます。この影響が出るのが足や手、顔などのむくみですね。
むくみの箇所を指で10秒ほど強く押えると、跡がへこんだまま残るのが特徴ですね。足のくるぶしあたりから見られるようになるのもポイントです。
腎臓病を悪化させる危険な要素
肥満
一般的に、肥満とはBMI(肥満度を表す指数)値25を上回る状態を指します。
さまざまな研究や報告でもBMI値が高くなるほど、GFRは低下して腎臓に大きな負担がかかることがわかっています。
高血圧
腎臓と血圧は深い関わりがあります。
腎臓は血液をろ過して、体内の老廃物、余分な水分を排出する働きをします。ただし、ろ過を円滑に行うためには血圧が一定の状態に保たれていなければなりません。
高血圧の状態が長く続くと腎臓の血管に負担がかかってしまい、動脈硬化が起こりやすくなります。血管が狭くなるため、腎臓に流れる血液量が減って機能に支障が出てくることになるのです。
糖尿病
糖尿病は腎機能への影響が極めて大きい持病です。
高血糖の状態が長期間続くと、腎臓のろ過機能が低下してたんぱく尿が出やすくなります。
残念ながら糖尿病の治療をしないまま高血糖状態が続くと、腎機能は悪化し続けるでしょう。最終的には、尿を作る機能が失われる腎不全の状態になりかねません。
透析を導入する疾患の中で最も多いのが、この糖尿病性腎臓病で、透析を受ける患者さんの約4割を占めるといわれます。まずは食事療法などでしっかり血糖値をコントロールしながら対処していくことが必要ですね。
脂質代謝異常
血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質が多すぎる状態なのが脂質異常症です。
脂質異常症も動脈硬化を進行させやすいので、慢性腎臓病の発症や進行に大きな影響を及ぼします。LDLコレステロールを標準値に抑えることで、慢性腎臓病の進行を抑えられるでしょう。
喫煙の習慣
喫煙は加熱時に発生する一酸化炭素を吸入することで、体内の赤血球と一酸化炭素が結びつき、酸素不足の状態となってしまいます。そのため、心拍数が増加したり、血管の収縮、血圧が上昇するようになります。
血圧が上昇すると、タバコを吸うたびに腎臓の血管に負担がかかるようになるため、ダメージは少なくありません。 タバコを1日20本以上吸う人は、吸わない人に比べると末期腎不全になる割合が倍以上になるともいわれています。
日頃からできる予防
重度の腎臓病患者さんにはオススメできないかもしれませんが、初期の段階から中程度のレベルのかたには以下の対策を積極的に採り入れていただければと思います。
水分摂取
腎臓は水分を調節する働きがあります。絶えず余分なものを外に排出して、身体に必要なものをとりいれる新陳代謝をくり返しているのです。
この代謝をスムーズにする手助けをするのが水をはじめとする水分補給だと考えていいでしょう。
事情があって水分補給がおろそかになることはよくあることですが、知らない間に脱水症状を起こしている場合があります。このとき腎臓に負担をかけている場合があります。
そのためこまめに水分補給をして、脱水症状にならないように気をつけることは大切ですね。
散歩、ウォーキング
散歩やウォーキングなどの有酸素運動は手っ取り早く始められて、無理なく心臓・肺の機能が強化され、代謝もよくなります。
散歩やウォーキングは思い立ってやるのもいいですが、ふだんから時間を決めてある程度まとまった距離を歩くようにしたらいいでしょう。そして絶対に義務にはならないほうがいいですね。
たとえば一日30分ほど無理をしない程度に歩くのがオススメです。何より継続が大切ですね!
定期的に継続することで、肥満や高脂血症、高血圧、糖尿病などの腎臓にとってダメージがある危険な要素の緩和にもつながります。
塩分を控えめにする
高血圧の人は特に漬物や塩漬け食品など塩分がキツイ食べ物は控えたほうがいいかもしれません。
ラーメン、うどんなどの汁は飲み干さない、味噌汁は具だくさんにするなど、生活の中でも減塩を心がけたらいいでしょう。
ストレッチ・ヨガ
ストレッチやヨガは負担にならない程度で、身体がしっかり伸びていると感じることが大切です。
中でもヨガのポーズは内蔵を刺激したり、呼吸によって身体の細胞に酸素を送り込む働きがあります。腎臓の健康のために、簡単なヨガのポーズから始めてみることもオススメです。
これらの基本ポーズはリラックス効果が高いため、体内の水分量の調節や心拍数の安定にもつながるでしょう。
座位半身ひねり
座った状態で左右に身体をひねるポーズは、腎臓や肝臓を刺激します。また、身体の免疫力を向上させるでしょう。
ブリッジポーズ
ブリッジ(橋)のポーズは腹部周辺の臓器を刺激します。また、高血圧をコントロールし、ストレスから身体を解放します。
両足・片足前屈
両足・片足前屈は腎臓を無理なく刺激し、消化吸収を助けます。生理痛などの不快感もやわらげられるでしょう。
睡眠をしっかりとる
睡眠をしっかりとることも腎臓を守るために大切なことです。
1日活動して疲れたら必ず就寝しなければなりません。疲れた場合はそれに見合うくらいの睡眠をとらなければならないし、心身をリセットしなければならないのです。
リセットをするために、身体の状態にふさわしい質と量で埋め合わせられるのが睡眠なのです。リラックスして熟睡できれば、内臓の働きや代謝などの身体の機能もバランスよく機能するようになるでしょう。
前向きな気持ちを持つ
病気になると、「もうダメだ」と落胆する人もいます。もちろん現状をしっかり把握することは必要でしょう。
脳は自己暗示にかかりやすい特徴があります。良いことも悪いことも情報としてキャッチするし、影響されやすいのです。そのためには、「できない」「ダメかもしれない…」、このようなマイナス思考を記憶するのは絶対にNGですね。
プラスの情報を覚えこませることで脳が活性化し、心身にいい影響が生まれるようになるのです。
まとめ
何度も言うようで大変恐縮ですが、腎臓は「沈黙の臓器」といわれるように、病気にかかったとしても目立った症状が出てこないのが悩ましいところですね……。
しかし自覚症状がないからと安心するのはよくありません。健康診断や人間ドックなどを定期的に受診して、早期の発見・治療に結びつけることがとても大切でしょう。
また仮に数値が基準値を超えていたとしても体質や持病の有無、年齢などの条件で対処方法も大きく変わってきます。
決して自己判断をせずに、腎臓内科などの頼れる先生に相談するのがいいかもしれませんね。