写真の見せ方・使い方で大きく印象が変わるデザインの不思議

写真は今なお強いメッセージ性を持ち、さまざまな感動を与えてくれる最良・最強の表現方法ではないでしょうか。動画が一般的になった今も、その価値と重要性は少しも変わらないし、今後も表現の最先端であり続けることでしょう。

写真をどのように使うか、見せるかによってデザインの訴求力も大きく変わるといいます。今回は芸術としての価値も高い写真をテーマに、メッセージとして伝える場合の基本原則を見ていきましょう。

目次

写真の持つ力

同じ物や場面を撮影したとしても、当然のことながら撮影する人の伝えたいことや表現方法で、まったく違う味わいの写真になります。ここでは写真の持つ力、さまざまな性格について見ていきましょう。

日常の再発見

午後の柔らかな日差しや木漏れ日は心地よい空間を作り出してくれます。

上記の写真はソファを包み込む柔らかな日差しがまどろむ時間の流れとともに映し出されています。

上の写真では、窓越しに見える屋外の風景と窓枠に置かれた花瓶が中と外との絶妙なコントラストを生み出しています。

特に窓から見える風景にはドラマがありますね。「はたして外のようすはどうなっているのだろうか…」そう想うだけでも、ここにはちょっとしたストーリーが生まれていくのです。

写真にメリハリをつけたり、見せたい部分のみ見せる場合には主役のモチーフ以外をぼかす方法があります。上の画像は一番手前の照明以外は全体的にぼかし気味です。これによって主役の部分に目が引きつけられるようになりますね。なおかつ雰囲気が伝わってきます。

日常の再発見が生まれる写真

  • 柔らかな日差しや木漏れ日などの非日常感
  • 窓から見える風景と室内のようすとの対比
  • 主役以外の部分のぼかし

インパクト

インパクトを生み出す写真に共通しているのは、構図が素晴らしいことです。まさに読者がその構図の伏線に誘われるように目で追っていくのは構図が優れているからに他なりません。

構図ばかりでなく、被写体の表情が生き生きしているとか、シチュエーションの面白さなども大きく影響するでしょう。上の岩場を歩く写真も、ローアングルから撮影した構図が非常に新鮮で目を引きます。

上の写真は構図が優れています。縦長の画面に女性が身をかがめながら、こちらに視線を送るようすは否応なしに目を引きます。

全体の安定した三角形構図だけでなく、女性が身をかがめることで生み出される構図がとても新鮮ですね。18世紀絵画の巨匠アングルが描いた「ドーソンヴィル伯爵夫人の肖像」がちょっと思い出されました……。

しぐさや動きの面白さ、フォルムの美しさが魅了する1枚といえるかもしれません。

ユニークな顔、奇抜な表情などを「ファニーフェイス」というそうですね。このモデルさんの表情もファニーフェイスといえるのかもしれません。コミカルな表情と嫌味のない雰囲気がいい味わいを醸し出していますね。

インパクトを生む

  • 構図の優れた写真。目がひきつけられる
  • 被写体の表情が生き生きしている
  • 緊迫感やドラマチックなようす

癒やし・心地よさ

まばゆい朝の光に照らされながら、はるか彼方の水平線の向こう側に想いを寄せる……。とても贅沢な時間であり、情感が伝わってくる心に刻まれる写真です。

ベッドの上で朝食を摂るくつろいだようすを撮影した写真。これを見ると肩の力が抜けて、何ともいえない心地よい脱力感が漂いますよね……。

癒やし・心地よさ

  • 感動的な自然の情景、爽やかで心が洗われる写真は人の心を癒やす
  • よい意味での脱力感がある写真は見る人の緊張を解き、馴染みやすい

ストーリー性

女性とワシの組み合わせ。シチュエーションの意外さに驚きますが、少し見上げるような安定感のある構図と、存在感抜群の雰囲気に強いメッセージが伝わるかのようです。

手前の女性は砂漠のはるか彼方を見つめているようです。見つめた先にはいったい何があるのでしょうか?それとも誰か来るのを待っているのでしょうか?

この写真を見るとすぐに浮かんでくるのが、「視線の先にある何か」です。

孫を抱いているのでしょうか……。愛おしい表情で見つめるおじいさん。いつも抱っこをしてくれるお母さんやお父さんでないことに戸惑い、キョトンとした目でおじいさんを見る赤ちゃん…。

偶然に撮影できた写真なのでしょうが、何とも微笑ましい姿に癒やされてしまいます。

この写真も構図が優れています。飛行機の機内から撮影した写真であることも臨場感を醸し出していますね。グランドキャニオンの絶景に食い入るように見つめる少年の姿が印象的です!

ストーリー性

  • メッセージ性があり、絵になる写真
  • 訴求力があり、見る側の想像を膨らませる
  • シャッターチャンスを見事に捉えた写真

写真をデザインで活用するには

デザインで写真を活用するシーンは枚挙にいとまがありません。むしろ写真はデザインそのものをより雄弁にし、魅力的にする最高最大の素材といってもいいでしょう。

ここでは写真を効果的にデザインする実例をとりあげてみましょう。

写真で説明する

デザインと写真の幸福な出会い。それはちょうど人との出会いに似ています。意見広告やポスターなどで、伝えたい内容と完全一致した写真に理屈っぽい説明は不要です。つまり長い説明を添えなくても、写真そのものが充分にその役割をはたしている場合ですね。 

絵本の効果をアピールする広告

子どもたちに夢を育むツールとしての絵本を提案する意見広告の例。

サンプル1

✕ NG例

  • 本を読み聞かせているようすは伝わってくる。ただし本と手元が写っているものの、夢を膨らませてくれるかどうかという確たる証拠はない。
サンプル2

○ OK例

  • 誰が見ても一目瞭然。母と子の楽しい読み聞かせのようすが伝わってくる。キャッチコピーと写真がマッチして説得力充分。

被写体の視線の方向を意識する

写真を見る人からすれば、意識が注がれるのは人の顔です。特に目は大切ですよね。さらに、「視線が注がれる先には何があるのだろうか…」と想像を膨らませます。

「目は口ほどに物を言う」ではありませんが、不思議とその方向に意識が向くようになるのです。

このような特性にそって、人物の視線の方向にメッセージやキャッチコピーを配置すると、視線を誘導しやすくなるのです。

保険のメリットをアピールする広告

サンプル1

✕ NG例

  • 人物の視線がキャッチコピーに対して逆方向を向いているため、ちょっとチグハグな印象を受ける。
サンプル2

○ OK例

  • キャッチコピーに対して人物の視線が同じ方向を向いているので違和感がない。

写真の余白を意識する

写真に文字を入れる場合、どんな写真を選んでいますか? 「ピッタリの写真があった!」と喜んでも、背景が複雑だったり、さまざまな要素が入っていたりすると意外と使いにくかったりするものです。

それは広告やポスターのように、写真に文字を乗せる場合はなおさらです。あらかじめ文字や他の要素が入る場合は、それを意識した検索をすることも必要でしょう。

またはPhotoshopなどのような画像加工ソフトを使って、可能な範囲で消すことも選択肢のひとつかもしれませんね。

シンプルモダンな室内の広告

サンプル1

✕ NG例

  • 壁に掛かったオブジェにキャッチコピーが重なるようになっていて可読性がいまいち
サンプル2

○ OK例

  • キャッチコピーが壁の白い空間に収まるように入っていて読みやすい

写真の効果的な配置

写真はレイアウト次第でまったく違った表情を醸し出すのが面白いところです。ここでは具体的な写真の活用事例を見ていきましょう!

断ち切りと空間

写真を限られた枠の中に配置した場合、空間が生まれます。その空間から見る者に何らかのメッセージを伝達することが可能になります。

それに対して断ち切り(紙面全体に余白を残さないでレイアウト)ではダイナミックなイメージで力強く表現できるのが理解できるでしょう。

デザインの用途や目的に応じて断ち切りにするか、トリミングをして使うべきかを決めたらいいでしょう。

次はバク転をしているようすを捉えた写真です。

上の場合は、写真とキャッチコピーとの間に広がる空白がイメージを広げるドラマチックな空間となりました。

断ち切りタイプでは元の写真をかなりトリミングをして使用しています。そのため動的でダイナミックな絵柄が強烈に迫ってきます。

原画をトリミングして断ち切りにすると、思わぬ効果が生まれたりするものです。

元画像

断ち切りや空白を活かす

  • 写真を枠内に納めるデザインは、つくられた空白がイマジネーションをかき立てる
  • 写真の断ち切りはダイナミックで迫力あるデザインの実現が可能

動きと静止

動きのある写真には現在進行系のエネルギーがあり、表情があります。また強いメッセージを伝えるでしょう。上の自転車レースはやや斜めに傾いた対角線構図が大きな効果を上げています。

また背景のブレを利用した流し撮りもスピード感を表現するのに効果的です。

それに対して下の車の写真は真逆ですね。角度をつけず、画面いっぱいに車体を配置して撮影することで静止した状態を認識させます。また安定感と落ち着きも得られるでしょう。

同じように記念撮影の写真は安定感があり、卒業アルバムなどのように個性を出さないデザインには向いています。しかし動きがないため、上手くレイアウトしないと堅いイメージになったり、面白味に欠ける嫌いがあります。

動きと静止の表現

  • 斜めに傾けた対角線構図や、背景などの流し撮りがスピード感、動きを表現する
  • 角度をつけず、画面いっぱいに対象物を配置することで静止した状態と安定感を表現
  • 集合写真の記念撮影などは、個性を出さない卒業アルバムなどと相性がいい

シンメトリー効果

シンメトリーは左右対称の構図の写真や、物の構造などをいいます。クールでシンプル。バランスや安定性を象徴するかたちとして、昔から親しまれてきました。

たとえば、建物や物が左右対称であることは、その構造の安定性を伝え、安心感を与えます。

シンメトリー効果

  • 左右対称の写真や絵、建物、インテリアなどを含めて言う。クールでバランスが良く、安定感がある

開放感を出す

Webサイトや雑誌、写真集などを見ていると、気持ちが解放される気分になったり、癒されることがあります。それはなぜなのでしょうか?

写真が開かれた空間を演出するには法則があります。室内の場合は屋外へと続く開けたスペースや窓があることや、三方、または四方がオープンで気が流れる快適な空間になっていることです。

室内を扱った写真集やカタログを制作する場合は、仮に密室の写真が並んでいたとしても開けたスペースの写真1枚があると、それだけでも変化が生まれるでしょう。

開放感を出す

  • 四方が窓などで開かれた空間をイメージする
  • 室内の奥行きがあり、屋外へと通じる場面がある

鮮やかな写真は色調を抑える

デザイン初心者の方や慣れてない人にとって陥りやすい失敗が、写真の色味を考慮しないでたくさん色を使ってしまうことです。

写真がすでにカラフルな色調の場合、文字や背景などで色をたくさん使うと過剰な色づかいになり落ちつかなくなってしまいます。メインの写真以外の部分は極力抑えたトーンにしましょう。

①のレイアウトではキャッチコピーのグラデーションが気になります。カラフルにしようと思ったまではいいのですが、とにかく文字がチカチカして読みにくくなってしまいました。

写真がカラフルな場合、②のように文字は写真を引き立たせるくらいでちょうどいいのです。

鮮やかな写真は色調を抑える

  • 色数の多いカラフルな写真がある場合は、文字などのデザイン要素は抑えめな表現に

まとめ

いかがでしたでしょうか?

写真とデザインは切っても切り離せない関係があります。写真の特徴や性格を理解するとデザインの幅は大きく広がることでしょう。

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