学校が感性や人格を育む芸術・道徳教育に力を入れないのはなぜ?

今に始まったことではありませんが、日本の学校教育で、「道徳」、「美術」、「音楽」などの教科が軽視されているように感じる人は少なくないでしょう。

言うまでもなく、文科省の学習指導要領が入試や進学などに重点を置いていることも要因の一つです。

これらの教科は、成績評価や進学の条件とは関係がないと思われがち。進学や受験をベースに考えれば仕方ないと思う反面、「教育は学力うんぬんではない」という視点からするとあまりにも腑に落ちない面もありますね……。

本来は心を育み、創造性を育む大切なはずの道徳、美術、音楽などの教科は、このまま軽視され続けるのでしょうか。現状と今後の展望を見ていきましょう。

目次

足かせになっている教育現場

芸術・道徳教育の問題点を説明するには、どうしても現在の日本の教育現場が抱えている課題について説明しなければならないでしょう。

それをしっかり確認した上で道徳教育や芸術系教育の問題点を吟味していきたいと思います。

教師、生徒ともにゆとりがない

一番の問題点は教師、生徒のどちらにもゆとりがないということが大きいでしょう。

特に深刻なのは小中学校教師の過重労働です。本来専念すべき授業だけでなく、生徒指導や保護者の対応、書類作成などの膨大な事務作業に追われていますよね……。

いつの頃からなのか、「学校の先生」というと過酷な職業、ストレスを一身に背負い込むというイメージが強くついてしまいました。現に離職率や休職率も急増している状況です。

先生がストレスを抱え込めば抱え込むほど、授業を受ける生徒たちも影響を受けたり、さまざまな問題が起きやすくなるのも当然といっていいかもしれません。

授業が身になりにくい

以前から指摘されていることですが、日本の教育や授業は矛盾が多いことも確かです。その一つが授業で学んでいても実社会では通用しない、身になりにくいということが挙げられるでしょう。

個人の習熟度に対応しない

クラス全員が同じペースで同じ内容を学ぶため、学習の習熟度に大きな差が出てしまうことが大きな課題です。

理解が早い生徒は退屈してしまう可能性があるでしょう。それに対して呑み込みがゆっくりな生徒は置いていかれるままになるかもしれません。

成績の評価方法

小中学校の成績評価は基本的にテストの点数や行動姿勢などで決定されます。ですからテスト結果はもちろん、目に見える形で先生にアピールできる子は有利かもしれません。

しかし個々の考えや発想、優しさ、協調性などのような外にあらわれない能力は評価されにくい傾向が強いですよね。

どんなに素晴らしい考えを持っていたとしてもそれを表す機会がなかったり、成績評価に結びつかないと虚しくなってしまうでしょう。いずれは結果や正解だけにこだわる生徒が増えるようになるかもしれませんね。

学生時代にこの傾向が根づいてしまうと、自分で考え、創造的に行動することが難しくなる可能性もあります。

受け身の授業

教師が生徒に一方的に教えるスタイルの授業は定番のスタイルですよね。それがやりやすいといえばやりやすいとも言えるのですが……。

もちろんこのようなスタイルの弊害もあります。

生徒と意見を交わしたり、理解の度合いを確認する機会が少ないため、深く考える習慣が身につきにくい欠点もあるでしょう。

詰め込み式の教育

学校の勉強は何と言っても暗記がメインでした。これは今でも変わらないでしょう。しかも徹底的な詰め込み式ですよね。

短い期間に多くの公式や文法、単語などたくさんの情報量をいっぺんに詰め込もうとするため、考える力が伴わなかったり、理解が深まらないことが往々にしてあります。

これはあくまでも試験や受験などの短期戦略的な学習法だといってもいいでしょう。長期的な知識の習得や蓄積にはつながりにくいのがもったいない気もします……。

教育カリキュラムが選べない

日本の義務教育の課題のひとつとして挙げられるのは、教育カリキュラムを選ぶことが出来ないことです。アメリカとの比較を見ていきましょう。

スクロールできます
教育システム日本アメリカ
カリキュラム国が定めた学習指導要領に基づき、全国の学校でほぼ同じ内容の授業州や学区によって大きな違い。カリキュラムは多様性がある
学校生活画一的なカリキュラムで、集団行動を重視し、規律が守られる傾向個々の生徒の個性や能力を尊重する。グループワークやディスカッションなど
成績評価定期テストや実力テストなど、ペーパーテストによる相対評価プレゼンテーション、レポート、プロジェクトなど、多様な方法による絶対評価
学校行事運動会、文化祭など、学校全体で一斉に行われる。生徒全員が参加生徒の関心に合わせたクラブ活動。ボランティア活動や地域貢献活動も重視
義務教育期間9年(小学校6年、中学校3年)12年(小学校5年、中学校3年、高校4年)
日本とアメリカの教育システムの違い

基本的に日本の教育システムはあらかじめ国が定めた内容に沿って授業のガイドラインが組まれ、授業の進捗状況や到達度に重点が置かれます。

これは教える先生にとっても、学ぶ生徒にとっても相当な負担となることがありますよね。

一方、アメリカの学校では、学生に対して比較的自由度が高くなっています。 幅広い選択科目が提供され、自分の習熟度にあったレベルで授業ができるのが特徴といえるでしょう。

主要科目偏重主義

主要科目は成績評価がしやすい

日本の義務教育では、主要5教科が授業で占める割合が圧倒的に高くなっています。

何よりも定期テストでの得点が成績評価や内申書に直結するため、評価をするのは比較的簡単です。また受験や進級をする上では絶対に欠かせない教科というのも大きいですよね。

定期テストの点数が絶対的な影響力を持つため、生徒はテストのための勉強に偏りがちになりやすいのも無理ありません。

実技・実践科目は評価がしにくい

実技教科としての有用性を認められ、しっかりとしたガイドラインもある保健体育はこの中では例外と考えていいでしょう。それ以外の教科は、担当教師の主観に頼らざるを得ない状況です。

また目に見える形で判断できない心の状態や感性など、人間の内面を見つめるデリケートな部分も扱っているため、わずらわしく感じる教師がいても決して不思議ではありません。

したがって得点をつけたり、評価をするのは決して簡単ではないでしょう。

芸術・道徳教育の効果

人間性を育む教科

芸術系の教科と道徳は軽視されやすい教科の代表かもしれません。

それは主要教科が入試や就職に直結する学力向上に重点が置かれているのに比べて、道徳、美術、音楽などの教科は、学力向上とは無縁の教科と見られているからです。

でもこれらの教科こそ、人格形成の基本になる科目ですよね。共感したり、人の心の痛みを感じられるようになったり、心の成長を促し、創造性を啓発する上では欠かせない科目といえるでしょう。

極端なことを言えば、主要教科が社会で活動するためのノウハウやスキルを生みだす特徴があるとするなら、芸術系の教科と道徳は行動の起点となり、創造や調和を生み出す心の居住地といえるかもしれませんね。

そう考えると最も地味な芸術系の科目や道徳は、本来もっともっと重視されて当然なのでしょうが、残念ながら現実はそうではないのです。

道徳教育と芸術教育は人間性や
人格形成に大きく関わる特別な領域。
  • 道徳:自分自身を見つめる。感謝・共感・謙虚などの大切な人間性を育む教科
  • 芸術:創造性が豊かになると感動する心が芽生え、人を喜ばせたり、幸福に導く気持が高まる

芸術教育がおよぼす効果

スケールの大きい絵を見て圧倒されたり、哀愁に満ちた音楽を聴いてなぜだか心がジーンとする……。こんな経験は誰でもありますよね。心を動かす芸術に特別な意味も理屈もありません。

美しいものを美しいと感じとれる心、感動できる感覚は私たちの人間的な幅や魅力を拡げてくれるでしょう。

自分の好きな絵を描いたり、ピアノで即興演奏すると誰もが無心になれます。表現することで多くの人と深いメッセージを共有できるのもいいですよね。

クリエイティブは自分自身を表現すること。表現することは、気持を伝えることやコミュニケーションの有効な手段にもなります。自分を見つめると同時に、自己肯定感を高めるのにも大いに役立つでしょう。

道徳教育がおよぼす効果

道徳教育は、一人ひとりの人格形成に欠かすことができません。それは人間の生き方に深く通じるものがあるからです。

善悪の価値観はもちろんですが、「どのように人を見つめるべきか」とか、「愛するとは何か」など、成長する過程で吸収すべき人生観、価値観などを育むとても大切な教科です。

道徳教育が不十分な場合、子どもたちの道徳心が育まれにくくなったり、社会生活を送る上で必要な倫理観が欠落する可能性があります。また社会全体のモラルが低下し、様々な問題が起こる可能性も決して否定できないでしょう。

これらの問題点を克服し、より効果的な道徳教育を実現するためには、学校、教員、生徒、そして地域社会が一体となって取り組む必要があります。

道徳教育の課題

道徳教育の課題は山積みですが、どのようなところが課題なのかを見てまいりましょう。

目的が不明確

文科省は日本の小中学校で、それぞれ2018年と2019年から道徳を特別教科として認定して授業をスタートしました。

あえて教科化した背景には、いじめの問題が年々深刻化していることが要因になっているのは間違いないでしょう。

しかし道徳を特別教科として定めたとしても、いじめのような深刻な事態の有効な対策になるかはまったくの未知数ですよね。なぜならあまりにも「何かをすればいい」という場当たり的な対策なのでは……と思うところが少なくないからです。

道徳教育がどこを目指しているのか、何を目的としているのかが見えてこない、曖昧状態な立ち位置なのが根本的な問題かもしれません。

授業の難しさ

ご存じのように道徳の授業は、単に知識を教えるという科目ではありません。生徒の心の成長や価値観を育むことが目的となるため、教師には高い見識と柔軟な指導力が求められるでしょう。

また、教員自身が道徳教育について十分な知識や経験を持っていない場合、指導要領を正しく理解し、実践することが難しいという課題もあります。

戦時中の「修身教育」の記憶と偏見

道徳教育には誤解や偏見が多く、教科として足並みが揃いにくいという課題があります。その大きな要因となっているのが明治末期から第二次大戦後にかけて施行されていた教育勅語でしょう。

教育勅語は、明治時代後期に発布された天皇の詔勅で、国民道徳の指針として位置づけられていました。

教育勅語の設立背景

  • 近代国家の建設:明治維新後、日本は近代国家へと大きく舵を切り、国民の意識統一が求められた。
  • 道徳教育の必要性: 当時、急激な西洋文明の流入に伴い、伝統的な道徳観が揺らぎつつあった。国民の道徳心を高め、国家への忠誠心を育む必要性があったと考えられている。

修身の内容と問題点

戦前の軍国主義下では、教育勅語による国主導の道徳教育(修身)が戦争への道に突入することになったという反省が込められています。

しかし問題は修身の内容が悪いというより、国民教育の中核でもあった修身を上手く利用して戦意を高揚させた当時の日本政府と軍部にあるといえるでしょう。

  • 修身の内容:忠孝仁義など儒教的道徳が教えられ、個人の品性を高めることを目的として当時の社会では普遍的な価値観として受け入れられていた。
  • 問題点第二次大戦の戦況が厳しくなるにつれて、「修身」は次第に国策に利用されるようになり、その内容はよりいっそう軍国主義的な色彩を帯びていった。

このような過去の歴史から、「道徳を教科化するなんてナンセンスだ!」と公言する知識人たちも少なくありません。戦前の軍国主義の再来だとか、ナショナリズムの介入だと言ってはばからないのです。

確かに過去の悲しい歴史はありました。しかし道徳教育を戦前の修身と同じように捉えるのは、あまりにも時代錯誤が甚だしいし、偏見と言わざるを得ないでしょう。

「修身教育」と廃止まで

「修身」の導入

学制発布により、小学で「修身」、中学で「修身学」が教科として設置される

「教育勅語」が発布

儒教的思想に基づいた内容で、学校の式典などで読み聞かすことで国民思想の統一がはかられる

「国定教科書」が導入される

国定修身教科書が発行され、全国統一の道徳教育が展開される

国民精神に大きな影響

国民の道徳心を高め、国家への忠誠心を育むことで、戦前の日本の国民精神形成に大きな影響

GHQからの停止命令

GHQの占領政策により、修身教育は軍国主義や超国家主義を助長するものとみなされ、1945年に授業が停止。

評価が難しい

他の教科のように数値で評価するのが難しいのが最大の課題です。

特に生徒の心の成長をどのように評価するかということは難しい問題で、教師にとっても大きな負担がかかります。道徳の性格上、他の教科と違ってこれが正解というように割り切れない(芸術教科もそう)部分があります。

知識の習得ではなく、心の成長を促すことを目的としているため、当然のことながら、従来の学力テストのような客観的な評価が難しいといえるでしょう。

教科として軽視されやすい

道徳は通知表への記載が必要ないこともあって、軽視されやすく、他の教科に振り替えられることがしばしばありますよね。ということは、教科としてそれだけの扱いということでしょう。

道徳の成績は、中学校や高校の入学試験に影響しないため、とかく生徒や保護者からも軽視されがちです。

教科数が増え、学習内容も増加する中で、各教科に割ける時間が限られてきています。その結果、主要教科に時間が割かれる分、道徳の授業時間が減らされてしまうケースも少なくありません。

芸術教育の課題

芸術の魅力を伝える人材が少ない

美術や音楽の教員免許を持つ教師でも、芸術について深い造詣や理解、共感する心を持っているかと言えばそうとも限りません。

仮に専門知識があっても、技術を伝授するのと教育はまったく別物といっていいでしょう。子どもたちの心に響くように伝えること、子どもたちの心の奥底に眠っている関心の眼を開かせることは、実はとても難しいことなのです。

芸術を心の底から愛し、子ども目線でふんだんに魅力を伝えられる人の登用が願われていることは間違いありません。

いわゆるエキスパートといえるような芸術専門の担当教員が不足していることは確かです。

割当時間の少なさ

他教科に比べると、美術や音楽、書道などの芸術学科に割かれる時間は圧倒的に少なく、十分な学習ができないことがあげられるでしょう。

また教科の楽しさや発見などの醍醐味を味わえずにカリキュラムを終了することも多く、中途半端な状態になりやすいです。

評価の難しさ

教科の性格上当然といえば当然ですが、美術や音楽は担当教員の美意識や主観的な判断に委ねられる部分が強いです。必然的に客観的な評価が難しくなるという課題がありますよね。

自己肯定感を引き出せない

芸術教科はあらゆる教科の中で、最も自己肯定感を引き出せる可能性が高い教科です。それは美術も音楽も書道も一緒ですね。

仮に子供たちが作品を描いたり、リコーダーを演奏したとします。その時「絵が下手」「楽器の演奏が下手」で片付けられてしまって成績の評価がつくようだと子供たちの自己肯定感は一気に下がってしまいます。

すなわち、上手いことがいいこと=音楽、美術の能力が高いと錯覚してしまうことです。現状では仕方ない面もありますが、万事が万事小手先の授業に走ってしまうと一定の子以外は関心を示さなくなってしまうでしょう。

授業が楽しくない

最大の課題は授業が楽しくないことです。私の学生時代は美術にしても音楽にしても、授業が楽しかったという記憶がほとんどありませんでした(単に相性の問題だったのかもしれませんが…)。

問題は経験値に頼ったり、指導要領にとらわれ過ぎるため、血の通わない授業になりやすいことです。または教科の特性上、芸術家肌で独自の信念と価値観を持つ先生が少なくないため、生徒の心をなかなか開くことができないということもあるのでしょう。

どうしたら子どもたちが関心を持ってくれるのか、音楽が好きになってくれるのか……など、そのような原点に立ち返る心がけが必要かもしれませんね。

道徳教育の改善すべきポイント

ここからは道徳教育をどのようにしたら改善することができるのか、または改善する可能性があるのか、そのポイントを見ていきたいと思います。

第三者委員会を設置する

日本の道徳教育を、より実りあるものにするためには第三者委員会の設置も真剣に検討すべきでしょう。理由は以下のとおりです。

客観的な視点からの分析

教育現場に関わっていない第三者だからこそ、固定観念や制約にとらわれず、さまざまな視点から問題点を洗い出し、より効果的な改善策を提示できる可能性があります。

専門知識の集結

心理学、社会学、教育学など各分野の専門家が集まることで、さまざまな角度からのアイディアや情報が得られ、密度の濃い議論が期待できます。

社会全体の関心が高まる

第三者委員会の設置は、道徳教育の重要性を社会全体に改めて認識させるきっかけとなるでしょう。より多くの人の関心を集める可能性があります。

教科としての透明性の確保

委員会で討議された議論の内容や結論はたびたび公開されることになります。その結果、透明性が確保され、教科としての信頼性や安心感を与えられるため、多くの人の理解を得やすくなるでしょう。

第三者委員会設置のメリット

  • 客観的な視点からの分析:さまざまな視点から問題点を洗い出し、より効果的な改善策を提示
  • 専門知識の集結:さまざまな角度からのアイディアや情報が得られ、密度の濃い議論が期待できる
  • 社会全体の関心の高まり:道徳教育の重要性を社会全体に改めて認識させるきっかけとなる
  • 透明性の確保:透明性が確保され、教科としての信頼性や安心感を与えられるため、多くの人の理解を得やすくなる

第三者委員会が検討すべき課題

第三者委員会を設置した場合、次のような内容が検討項目となるでしょう。

道徳教育の目的

道徳教育の目指すものは何か、どのような人間を育成したいのか、という根本的な問いに対する明確な方向性を導き出す必要があります。

教材やカリキュラムの改善

より効果的な教材やカリキュラムの開発のために、現在使われている教材やカリキュラムの問題点を分析することが必須になるでしょう。

教師の育成

道徳教育を実践する教員の資質の向上は必須です。そのためにはどのような研修や支援が必要なのかを検討する必要があります。

家庭や地域社会との連携

学校だけでなく、家庭や地域社会との連携を強化して、一貫した道徳教育を実現する方法を検討する必要があります。

評価方法

道徳教育の効果をどのように評価するのが理想的なのか、客観的な評価方法の検討が必要です。

第三者委員会が検討すべき課題

  • 道徳教育の目的:「どのような人間を育成したいのか」、という問いに対する明確な答えを導き出す
  • 教材やカリキュラムの改善:現在の教材の問題点を分析し、効果的な教材やカリキュラムを開発
  • 教員の育成:教員の資質向上のため、どのような研修や支援が必要か検討
  • 家庭や地域社会との連携:家庭や地域社会との連携を強化して、一貫した道徳教育の実現方法
  • 評価方法:教育の効果をどのように評価するのかを検討

体験学習をとり入れる

道徳教育は体験学習を多くとり入れることで、教室では理解できなかった社会の実態や現状を知ることができます。授業を通じて社会との接点を持つことは貴重な体験となるでしょう。

たとえばボランティアなどの奉仕活動や養護施設の訪問など、実社会でのさまざまな体験は、公的な意識が芽生えるきっかけになるかもしれません。

また、「人の優しさに触れてうれしかった…」など、さまざまな発見をしたり、成長する機会になるかもしれないですよね。

また人々との交流を通して、「どのようにすれば心を開いてもらえるのか」、「喜んでもらえるのか」ということを体感できるようにもなるでしょう。

海外の成功事例を参考にする

海外の道徳教育の成功事例を参考に、日本の教育に活かせる点を探っていくことも有効でしょう。

道徳教育は一朝一夕に成果が出るものではありません。生徒や保護者の意見も吸い上げながら、長期的なプランを持って継続的な取り組みをすることが必要ですよね。

道徳教育の改善すべきポイント

  • 第三者委員会の設置:各界からの意見の収集。公平性と透明性の確保
  • 体験学習をとり入れる:授業を通じて社会との接点を持つことは貴重な体験となる
  • 海外の成功事例を参考にする:海外の道徳教育の成功事例を参考に、日本の教育に活かせる点を探る

芸術系教科の改善すべきポイント

専門家を講師として招く

芸術・道徳教育は各界の教育者に授業を一任するのもいいかもしれません。

また月1回など、定期的に社会の第一線で活躍しているアーティストや演奏家を招いて交流の場を持つのは、子どもたちにとって大きな刺激となるでしょう。

実践的な指導やワークショップを行うのも新鮮ですね。実例をあげながら、さまざまな角度で指導を受けたり、対話形式で質疑応答が交わされると生徒のモチベーションも大きく上がるでしょう。

楽しさを伝える

小中学校時代は最も多感な時期で、インスピレーションや創造性が根づく大切な年代です。

美術や音楽の授業で大切なのは、いかに子どもたちの関心を呼び起こし、楽しさを伝えられるかがポイントでしょう。

芸術教科は楽しくないと絶対に子どもたちは心を開きません。美術であれば物の見方や、色の組みあわせの不思議なども関心を引くでしょう。

音楽であれば音色の性格の違いを実演するのも面白いかもしれません…。何より教師が心から美術、音楽を愛していて、その魅力を分かりやすく伝えることがポイントですよね。

体験学習をとり入れる

道徳教育と同様に体験学習をとり入れることも授業を意義あるものにするでしょう。

たとえば芸術系教科であれば、自然観察やクラシック音楽の演奏会、美術館や博物館への訪問などは、視野を大きく広げるきっかけになります。

実体験を通して芸術に触れる機会を増やすことで、より深い学びの場が提供されるようになるでしょう。いろいろな角度から芸術を楽しむ感覚を身につけることも必要かもしれませんね。

多彩な評価方法を導入

芸術教育で特に大切なポイントは作品に対する感受性や表現力です。

とかく絵の上手な子や、ピアノの演奏の上達の早い子をほめたたえる傾向がありますが、それだけでは授業として不十分です。

たとえばクラシック音楽作品に対して深く共感する感性を持つ子がいるとすれば、感じる心を受け入れてあげて、それを引き伸ばせるようなサポートも必要かもしれません。

技術だけでなく、創造性や表現力、美術、音楽などに対する感受性などを評価するシステムは、生徒のモチベーションを上げるきっかけになり、自己肯定感を高めるようになるでしょう。

グループワークの活用

仲間と協力し、話し合いながら一つの作品を生み出すことはクラスメイトとの連帯感、協調性を育むきっかけになります。

おそらく自分一人で作品を作る場合とはまったく違った喜びや達成感を味わうこともできるでしょう。作る過程ではさまざまな困難な状況があったとしても完成した時にはうれしさがこみあげてくるかもしれません

またコミュニケーション能力を育む上でも大きな力となり、実社会においても役立つことでしょう。

芸術系教育の改善すべきポイント

  • 専門家を講師として招く:アーティストや演奏家を招いて交流の場を持つのは、子どもたちにとって大きな刺激となる
  • 楽しさを伝える:子どもたちの関心を呼び起こし、楽しさを伝えられるかがポイント
  • 体験学習をとり入れる∶実体験を通して芸術に触れる機会を増やすことで、より深い学びの場が提供される
  • 多彩な評価方法を導入:感受性などを評価するシステムは、生徒のモチベーションを上げたり、自己肯定感を高めるきっかけになる
  • グループワークの活用:仲間と協力し、話し合いながら作品を生み出すことは連帯感、協調性を育む

まとめ

いかがでしたでしょうか?

道徳教育と芸術系教育は、現在の日本の教育カリキュラムだとなかなか難しい状況にあるのが分かっていただけたのではないでしょうか。

これらの教科がなぜ軽視されるのかというと、ひとことで言えば受験や進級に関係ないからです。しかし成績評価とは関係なさそうなこれらの教科が、実は心の安定と成長に大いに関係があるというのが実に悩ましいところですよね……。

道徳や芸術系教科が充実したカリキュラムで行われるようになるには、さまざまな課題をクリアしなければならないのはもちろんですが、日本の教育風土や教育システムの根本的な改善も必要かもしれません。

子どもたちがどんなときでも、「学校に行くのが待ち遠しい……」。声を大にして言える、そんな日が来ることを願うばかりです。

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