仕事は人生の活動時間の約半分にも及ぶ、あらゆる活動のメインステージだともいえるでしょう。
仕事がうまくいくか、やり甲斐があるかは生活の安定や日々の満足度にも大きく影響しますよね。しかし3年にも及んだコロナ禍での経済の大打撃。円安による長引く不況など……。
ライフスタイルは大きく変化して、先行きの見通しが立ちにくい時代となりました。
そして今、新しいライフスタイル、働き方のひとつとして副業が大きくクローズアップされているのです。新しい価値観、仕事の多様性を求めて副業の波が押し寄せているのかもしれません。
副業を持つ
これまでは副業を始めると、何か「禁じ手」を使ったような偏見の目で見られる事が多かったように思います。けれどもここ数年で社会の副業に対する意識は大きく変化しました。
それでは現在日本では、副業に対して一般的にどのような認識、風潮があるのでしょうか?
働きかたの大転換期
かつて社会人として自立することは、安定したひとつの仕事を生涯やり遂げていくことが王道のように思われていました。
しかし昨今の先行き不透明な国の経済動向やライフスタイルの多様化で、日本式の雇用形態や労働条件も大きな転期を迎えようとしています。
2018年に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を制定したことで、副業に対する見かたが大きく変化しました。これ以降、副業解禁ヘの流れが急速に進展するようになったのです。
下の厚労省のグラフからは、生活を少しでも楽にするために副業を始めたという人が際立って多いことがよく分かりますね。
意識改革が求められている
かつて1960年代から1980年代の日本は高度経済成長期にあり、終身雇用や年功序列といった社員の雇用条件が安定していた時代がありました。
しかし時は大きく移り変わりました。日本では、年々少子高齢化が進み、労働人口の減少が社会の根幹を揺るがしかねない深刻な状況になりつつあります。
また家族のかたちの多様化や育児や介護との両立などのような事例に直面するようになり、あらゆる状況に柔軟に対応した働き方が求められてきているのです。
2016年9月に「働き方改革実現会議」が設置され、次のようなスローガンが提唱されています。
働く人の視点に立って、 労働制度の抜本改革を行い、企業文化や風土も含めて変えようとするもの。 働く方一人ひとりが、より良い将来の展望を持ち得るようにする。
働く人の視点に立った働き方改革の意義
「働き方改革実現会議」では、これまで労働環境では当たり前のようになっていた残業や長時間労働、有給の取得、就労スタイルの画一化などの問題の法整備から始まったのでした。
それに伴い副業も多様なライフスタイルに対応すべくガイドラインが設けられたのです。
メリット
副業を始めると具体的にどんなメリットがあるのでしょうか? 以下は考えられるパターンです。
収入の支えになる
副業を始める最大のメリットは、言うまでもなく収入が増えることでしょう。
副業なら今まで育んできた技術や経験、専門分野を有効に活用することで収入UPも見込めます。
今後労働環境が厳しくなる一方で、「昇給が見込めない」「リストラの不安」といった慢性的な不安を抱えている人たちにとっては、本業以外の収入源があることは経済的、精神的にメリットが大きいといえるでしょう。
いざという時の備えになる
今は昔からの終身雇用という守られたシステムも徐々に崩壊しつつあります。
社会の変化のスピードが速く、景気の動向が不安定で、いつ解雇になっても不思議ではなく、先は誰も予測できない時代……。
つまり自分を活かせる第二、第三の道を絶えず考えていかなければならないのです。そんな現代にこそ副業は強い味方となり、いざという時の備えにもなるでしょう。
気分転換になる
働く職種や労働環境の相性もあると思いますが、本業での慣れた職場とはまったく別の環境で働くことは意外に気分転換になります。
「こんな考えかたもあったのか」「こんな働きかたもあるのか…」という、さまざまな体験が新鮮で刺激的だからですよね。
キャリアアップにつながる
本業だけでは得られない専門知識やスキル、ノウハウを習得することで、キャリアアップにつながることも期待できます。
本業と並行しておこなうことで、未経験の分野にチャレンジしたり、本業では難しい経験を積むことができます。そのことを通じて眠っていた能力を発見したり、自分の可能性を広げることができるでしょう。
人脈・友人ができる
副業の魅力のひとつに、本業では絶対に出会うことがなかった人との出会いや関係を持てることがあります。
人柄や能力を認められれば、人脈が広がることで、これまで手をつけたことのない仕事に発展していくケースも大いに期待できるでしょう。
さらにスキルが身につくことで、自分では想像できなかったような新しい可能性の扉が開けていくかもしれません。
デメリット
副業にはメリットだけでなく、さまざまなデメリットもあります。以下はその代表的な例でしょう。
職場の許可を受けなければならない
今では副業を許可する会社もあるようですが、それは本当に限られた会社でしょうね…。
副業が解禁され始めたのはここ数年の傾向であって、大半の会社は副業を良しとしていません。それは労災発生時の責任の所在や労働時間の管理など、トラブルになる可能性もあるからです。
日本法規情報の調査では、副業に関するトラブルに巻き込まれた際、約半数が「誰にも相談していない」と回答していることが明らかになっています。
確定申告が必要になる
仮に副業をするとして、その年収が20万円を超えると確定申告の義務が発生します。
副業の収入から必要経費を差し引いた所得が年間20万円以上になった場合、原則として給与の年末調整とは別に確定申告をしなければなりません。期間は翌年の2月16日~3月15日の間に「白色申告」「青色申告」のどちらかで税務署に届け出ることが義務づけられています。
また住民税については、副業所得が20万円に満たない場合でも市区町村の役所・役場へ申告が必要なので要注意です。
負担が増える
一番大きな問題は肉体的、精神的疲労かもしれません。副業を始めれば、当然ながら本業とは別の労働時間が発生します。
たとえば平日であれば本業が終わったあとに副業をやる場合、かなり疲労を蓄積させることになるでしょう。
副業に力を入れるあまり、今まではあったはずの余暇や睡眠の時間を割けば身体への負担は当然増えるのは間違いありません。
気力・体力をしっかり温存させることを基本条件として、無理なスケジュールは組まないなど、本業と副業のバランスをうまく取っていくことが、どちらも両立させていくコツでしょうね。
理想的な副業のありかた
副業をすることで生活に張りが出てきたり、価値あるものにするためにはどうしたらいいのでしょうか?またどのように考えるべきでしょうか。以下の項目について見ていきます。
趣味と実益を兼ねる
趣味と実益を兼ねた仕事は、肉体的・精神的負担が比較的少なく、意欲を高められる可能性が高いといえるでしょう。
たとえば日々のデスクワークで運動不足になり、体脂肪が急激に増えてしまったとします。このような場合は掃除や搬入搬出などの副業を考えてみるのも悪くないかもしれません。
またクリエイティブな仕事をやってみたくてたまらないけれど、ふだんそういう状況に遭遇することがない人にとっては、条件さえ合えば副業はチャレンジするいい機会になるかもしれませんね。
日頃のモヤモヤや課題が解消したり、達成感が得られたり、その上で給与も得られるという、趣味と実益を兼ねたプラスアルファ効果こそ、本業とともに副業を継続できる秘訣となるでしょう。
本業とは別の業種を選ぶ
本業とは別の業種を選ぶことも大切かもしれませんね。
自分のスキルを最大限に駆使して、同じ業種に就くという考え方もありますが、これは想像以上に大変なことです。相当な意欲とバイタリティ(あと気力、体力も…)がなければ難しいでしょう。
本業に似た性格の業種の場合、時として残業をしているような感覚にもなりやすく、疲労が蓄積されやすい傾向が高まる可能性があります。
これを回避するためにも、たとえば平日にデスクワークをしていたなら、土日などに動き回る副業を選ぶのもいいかもしれません。もちろんその逆も考えられるでしょう。
自分の価値を見い出す
自分の価値というものは理解しているようで、実は気づいていなかったということはよくあるものです。
「好きであること」「関心があること」「時間の融通がきく」、そのような条件さえ揃えば新たな挑戦をすることは躊躇する必要はないでしょう。
副業をすることで、「こんな自分があったんだ」「こんなこともできたんだ」という発見があれば、それは自分自身の隠れた適性や人間性を発掘したも同然です。
眠っている自分の可能性を切り開くチャンスにつながるし、思いがけない人たちとの出会いが実現したり、自分の成長も促してくれるでしょう。
未来への投資
同じ職場に長い間勤務していると、「はたしてこれで良かっただろうか」、「このままでいいのだろうか」という疑念が頭をよぎることがありませんか?
ふだんは外から自分を見つめることはなかなかできません。
「自分が社会からどう評価されているのか」、「本当は何をやりたいのか」など、冷静に自分自身を見つめ直す機会を与えてくれるのは副業の最大のメリットともいえるでしょう。
また副業での支えがあればこそ、本業で少々リスクが高い仕事にも挑戦できるし、本業が安定していれば、副業で果敢に挑戦できるメリットもあります。副業は人生を豊かにし、未来へ投資するための選択肢として有効といえるでしょう。
まとめ
副業はどこに着地点を置くかによって、仕事の選び方や就労に注ぐウエイトも大きく変わります。もちろん「本業」というしっかりした家計を支える土台があってこそ、副業に余力をそそぐことができるのかもしれません。
今後副業が時代の主流になれるかは、生活の穴埋めだけでなく、「やってよかった」「人生が変わった」「自分探しができた」などのように、副業をすることで大きな価値や効果が見出せるかがひとつの指標になるでしょうね……。