「口は災いのもと」と昔からよく言われてきました。それほど言葉は大切で、人間関係の構築に大きな影響をもたらすと言われます。
「言葉の暴力」が横行する昨今、話し方、口調はその人の人格の表れだともいわれますよね。改めて会話のやりとりから見えてくる盲点や解決方法を見てまいりましょう!
言葉は相手ヘの気持ちの表れ
とっさに出る言葉というのは、紛れもない気持ちの表れです。「そんなつもりじゃなかった……」「あのときはイライラしていたんだよ」などと言い訳をする人も少なくないですよね。
しかし、一度口から出てきた言葉はもう絶対に取り戻すことができません。不用意に投げかけた言葉が「取り返しがつかないことになってしまった」ということも多いのです。
そのためにも言葉がけの意識を変えなければならないでしょう!
言いかた次第で反応は大きく変化
ふだんのやりとりから、重要な会話まで言い方が変わるだけで良くも悪くもその局面が大きく変わってしまいます。しかしその大半は少し言い方を変えたり、補足さえすれば円満に解決することがほとんどです。
それでは生活のあらゆる場面で遭遇する具体例を見てまいりましょう!
指示したことをやってくれない
上司から「1週間後までにこの資料を作成しておいて」と言われたが、忙しさのため手をつけることが出来ずにその日を迎えてしまった。
CASE1
✕ どうして、君は言ったとおりにやってくれないの!!
◯ それは困ったな。私は加藤さんに資料を作って欲しかったの。だって加藤さんはまとめるポイントが良く分かってるし、作業が早いから……。
何事も頭ごなしはよくありません。それがストレートに出たよくない例が赤字の言い方ですよね。これだと萎縮してしまい、部下との関係はギクシャクしてしまうかもしれません。
黒字の場合も困惑していることを伝えていますが、すぐに依頼したことに対する意義づけをして部下をフォローしています。これなら萎縮することなく、次の指示にはしっかりと応えようという気持ちになるでしょう!
企画の大成功をねぎらう
企画が大ヒット商品となり、上司からねぎらいの言葉をかけられた。
CASE2
✕ 今回の商品は良かったね。やればできるじゃない! これからもよろしくね!
◯ 素晴らしい商品を開発してくれてありがとう。◯◯さんの不断の努力が実ったね。自分のことのようにうれしいよ!
成果をほめられるのは誰でもうれしいものですよね。ただしほめ方を間違うと意外なプレッシャーになったりするので注意が必要です。
赤字の例はその典型的なパターンです。ほめてるつもりが、気づかないうちに「やってあたりまえ」のような上から目線になっているのが痛々しいところです。
黒字例のように素直に成功をたたえ、励まし共感することが必要でしょう。そのことによって本人もやり遂げたことが無駄ではなかったと再認識するようになるのです。
頼みにくい依頼をする
上司から同じ部署のBさんが病欠のため、Cさんに代理で書類の完成をお願いするように伝えてほしいという依頼があった。
CASE3
✕ 私の頼みというより、部長が言っていることで、私もこんなことお願いするのは躊躇するんだけど、明日までBさんの書類を完成させてほしいんだって……。
◯これは部長からの緊急のお願いです。明日の午前中までBさんが作成していた書類を代わりに完成させてほしいということでした。
上司からのことづけを伝える場合など、自分が発信者でない場合は相手に伝えるトーンが少しダウンしてしまう場合がよくあります。それに伴って歯切れの悪いまわりくどい表現になることがよくあります。
また伝えにくさを感じる人も少なくないでしょう。そんなときは自分の主観は置いておいて、伝えたいことをわかりやすく伝えることが大切です。
危うく事故になりそうな時
車の陰から猛スピードで出てきた自転車と危うくぶつかりそうになる……。
CASE4
✕ 何やってるの! ぶつかるじゃない! 事故になったらどうするつもりなの?
◯ ああびっくりしたー。お願いだから人がいないのを確認してから加速してね。そうじゃないと危なくて歩けないから。これからは気をつけてよね。
突然の出来事に驚いているようすです。
赤字の場合はとっさの出来事に相手を責める言葉が出てしまっていました。たとえこちらに落ち度がなかったとしても、このままだと感情的なもつれからトラブルになりかねません。
しかし黒字は驚いたことを叫んでいるものの、危ない状況だったことを確認するように指摘しています。的確な対応といえるでしょう。
うっかり忘れ(1)
新商品の企画書を書き上げたが、肝心の商品のターゲットの客層を記載した項目がないことが判明した。
POINT5
✕ えーっ。 ふつうはターゲットを記載するんじゃないの……。
◯ 準備ありがとう。企画書もよく出来てるわ。ただ、これだと肝心のターゲットがわからないから片手落ちになっちゃうね。
大切なことなのに「うっかり忘れてしまう」ことは誰にでもあるものです。もちろん許されることではありませんが、言い方を気をつけないと角が立ってしまいます。赤字の場合は個人攻撃になり、追い詰めることになるので要注意です。
それを指摘する場合も注意が必要です。相手の良いところをしっかり認めた上で指摘するというのが基本でしょう。
うっかり忘れ(2)
「会場の入口付近に観葉植物を置くとお客さんの通行の邪魔になるので、別の場所に置いて欲しい」という約束が守られていなかったので注意した。
POINT6
✕ 前にも言ったけど、ここに物を置いたら邪魔なの!
◯ もう忘れたかもしれないけど言っておくね。ここに物を置くと人の通行の邪魔になるので、何も置かないでほしいの
とっさの場面でのやりとりです。赤字の場合は、もはや感情が先走ってる言い方といえるのではないでしょうか。
このままだと溝が広がりそうなので、「忘れることもある」というのを前提に改めて確認し、事の重大さを丁寧に説明しています。これなら相手も嫌な気持ちにならないで受けとめてくれることでしょう。
誤解を生み出す原因は?
会話で誤解を生み出す主な理由としては、相手に対して「上から目線で話す」ことが圧倒的に多いことがあげられるでしょう。
つまり相手を見下しているということですよね。このことがさまざまな摩擦を生み出してしまう原因になるのです。
感情をぶつけてしまう
誤解を生みだす最大の原因は言葉に感情をぶつけてしまうことです。
程度の差こそあれ、ストレートな感情は言葉の凶器になることも決して珍しくありません。感情をぶつけてしまうと、その代償が大きいため、人間関係に修復できないようなヒビも入ってしまいます。
相手を責めてしまう
よくあるのが無意識のうちに相手を責めていることです。そのほとんどが良かれと思って原因追求をしたり、追い込むことが正義だと勘違いしているところから悲劇が始まります。
その人のことを思って言われた発言なのかどうかは誰でも分かります。人間関係が破綻する要因も相手が「不当に責められている」という実感があるときといえるでしょう。相手が正論だと認識しながらも到底受け入れられないのは、こんなところに原因があります。
説明が足りない
相手にお願いをするときや、理解してもらいたいときに大切なのがしっかりとした説明です。
しかし説明が不充分だと理解してもらうこともおろか、素直に話を聞いてもらえないという問題が出てきてしまいますよね。
依頼する人がていねいな説明を行わないとトラブルや誤解を招いてしまうので要注意です。
まわりくどい
自分が責任を持って話そうという意識が欠如しているときによくある事例です。
そのため話す言葉の一つ一つがどうにも歯切れが悪く、話の筋がぼやけてしまいがちです。個人の主観や推察を入れた話も同様です。
聞いている人にとって、まわりくどいお願いや話をされることほどイライラすることはありません。気をつけましょう。
人と比較する
よくあるのが、他の人と比べながら嫌味を言うことです。言われた人はたまりません。「なぜあの人と比較されないといけないの?」と疑問を抱くでしょう。表面的な実力や結果のみに左右されると、思わずこのような発言が出てくることがあります。
他人と比べる発言をするのは、言う本人が劣等感を抱いている事が多く、価値観が表面的な結果や競争にとらわれてしまっていることの表れでもありますよね。
人の話に耳を傾けない
自分の意見が絶対に正しいと思っている人は、自分の気持ちをぶつけるだけぶつけて、相手の話を聞こうとしない人が多いようです。なぜなら自分の意見が正論で相手の話を聞く必要がないと思っているからです。
しかし人の話に耳を傾けなくなると会話が成立しないため、信頼を得ることは難しいでしょう。
良好なコミュニケーションのコツ
人間的な魅力のある人、話をすると相手を惹き込む人というのは相手と「対等な目線で話す」のが会話の基本になっています。
自然体で接するので相手によけいなプレッシャーを与えることもないし、会話は終始なごやかな雰囲気になるでしょう!
相手を受け入れる
まず大切なのが相手を一人の人間として受け入れることです。すべての会話は一人の人間として認めるところから始まるといってもいいでしょう。
特に相手のいいところを積極的に肯定することが必要なのです。
信頼して話す
話が円滑に進むポイントは相手を信頼することが前提条件です。
「話を理解してもらえる」と信頼して、改善してほしいことを相手に伝えます。そうすると、伝わり方がまったく違いますし、本当にわかってほしいことが伝わりやすくなるのです。
感動や喜びを伝える
人はいつも、人と感動を共有したいと思っているし、喜びを感じたいと思っています。
何気ない会話の中で、相手に対して感動を分け与えたり、喜びを表現できたらどんなに素晴らしいでしょうか? 会話の中に相手に喜んでもらえる心のエッセンスをつけ加えてみましょう。
日頃お世話になってる感謝の気持ちでも構いません。単なる話し相手としてより、ぐっと心の距離を近づけることもできるでしょう!
はっきり伝える
言いにくい話を伝えるときは、用件をはっきりと伝えることが必要です。
まずは一言で端的に結論を伝えることから始めましょう。先に結論を伝えると話の筋道が伝わりやすいですし、話を聞くことに集中できるからです。
その後の展開も無理なく進められるでしょう。
ありのままの自分を見せる
良好な人間関係を築ける人というのは決して見栄を張りません。相手にありのままの自分を見せることができます。見栄を張ったり、自分が凄い人間なんだと見せようとすると、永遠に相手と壁のない関係を築くことはできないでしょう……。
ありのままの自分で人と関わることができれば、相手と心を割って本音で向き合えるので、本物の信頼関係が生まれるのです。
デリケートな領域に踏み込まない
よく「あの人は人の心に土足で入ってくる」と表現することがありますよね。つまりデリカシーがない人は嫌われてしまうということ。
誰でも触れてほしくないデリケートな一面やプライベートな側面があります。そういった本人しか分からない領域はそっとしておくのが良識あるコミュニケーションの前提です。あらかじめそのように対応すれば、相手は言葉には出さなくても「分かってくれてるな」ということになるでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
コミュニケーションがどうもうまくいかないというとき、気をつけなければならないのが、話の目線が上から見下ろすようになっていないかということです。
相手との円満な会話を成立させたいのであれば、対等な目線で話をしなければならないというのが分かっていただけたことと思います。