「あなたが好きなエッセンシャルオイル(精油)は何ですか?」という質問をすると、多くの人が躊躇せずに「ラベンダー」と答えるでしょう。
もちろんラベンダーが生活に馴染み深く、一般的に知られていることもありますが、それだけではありませんよね。
すーっと身体全体を包み込むような深い香りと言葉では言い尽くせない安心感。そしてさまざまな効果効能!
ラベンダーが万能のアロマオイルと呼ばれるゆえんかもしれません。今回はラベンダーオイルの魅力と効果を探っていきたいと思います。
ラベンダーについて
ラベンダーは「ハーブの女王」、エッセンシャルオイルの定番として昔から幅広く支持されていますよね。
特にリナロールを含む割合が高いラベンダーは、フルーティーでさわやかな香りが印象的です。
ハーブに分類され、薬効成分も高い植物ですが、花のようなフローラルな香りを放つラベンダーはエッセンシャルオイルの中でも、特別に魅力的な存在と言えるでしょう。
大自然の恵みを想わせるハーブ特有の土の香りも印象的です。愛らしい出で立ちだけでなく、環境を浄化し、空間を輝かせるその存在は、やはり特別なものと言わざるをえません。
ヨーロッパ、特にイギリスではガーデニングの一環として栽培されるなど、深く生活に溶け込んでいます。
多くの愛好家たちにとって、ラベンダーは『心身に最も有効に作用するハーブ』として確固たる位置を築いています。その無尽蔵の魅力ゆえ、多くの品種改良がなされているのも事実ですね。
深いリラックス効果
ラベンダーオイルの最大の魅力は鎮静作用(気分を落ち着ける)ではないでしょうか。
気分が落ち着く
ラベンダーの香りを嗅ぐと深いリラックス感が得られます。
身体が活動モードに慣れてしまい、休息に入るのが難しいときに、自律神経を自然に整えてリラックスモードに導いてくれる作用があるのです。
もうひとつ、ラベンダー精油は不安を鎮める作用もあります。気持ちが沈みがちのとき…、不安でいっぱいのとき…、神経過敏な状態のとき…。優しく作用してあなたの心を癒やしてくれるでしょう。
安眠効果
睡眠にも一定の効果があります。
アロマディフューザーなどでラベンダーの香りを漂わせたり、枕元に数滴エッセンシャルオイルを染み込ませると、通常のときに比べて、深い眠りに入れるという試験報告があります。
最近では医療機関や介護施設などでも積極的に活用されているようですね。
これはラベンダー最大の魅力である鎮静作用が効果を発揮していると言えるでしょう。
肌組織の再生・回復を促す
アロマテラピーの原点
https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Ren%C3%A9-Maurice_Gattefoss%C3%A9.jpg#mw-jump-to-license
「ケガの功名」とはこのことをいうのでしょう……。
精油の驚くべき効果を偶然発見したのがフランスの化学者、ルネ-モーリス・ガットフォセ(1881-1950)でした。
彼は1910年7月、実験中に手に大変な火傷を負ってしまいます。そして無我夢中で手もとにあったラベンダーの精油を手に擦り込んでいたのでした。
そのとき、ラベンダー油が痛みをやわらげただけでなく、火傷の痕を治す早さや回復力に驚いたといいます……。
この体験は1928年にガットフォセが執筆した、「アロマテラピー」という本のタイトルにも使われており、その後「アロマテラピー」はひとつの用語となったのでした。
香料を扱う仕事をしていた彼は、精油は肉体を回復させるだけでなく精神を癒す力を兼ね備えていることを予感していたのかもしれません。
スキンケアに最適
ラベンダーは肌に穏やかに浸透することから、化粧品や香水にもよく使われます。
ラベンダーオイルは、通常は水蒸気蒸留法という方法で精油が抽出されます。抽出するときに精油とともに得られる芳香蒸留水と呼ばれる水溶液を皆様はご存知でしょうか?
一般的に芳香蒸留水はハーブウォーター、フローラルウォーターとも呼ばれています。
芳香蒸留水は高温の水蒸気で抽出される性格上、植物本来の水溶性成分と油溶性成分(=精油)の両方を含みます。ただし精油に比べると成分が微量なため、希釈しないで使えるのが大きなメリットですね。
そのため化粧水としても日々のスキンケアに大変重宝するでしょう。
スプレーボトルなどに入れて使うのもオススメです。精油に比べると安価なため気軽に使えるのがいいかもしれませんね!
炎症や火傷、傷の回復を助ける
ラベンダーは火傷や、切り傷、擦り傷などの皮膚の損傷や、何らかの炎症を起こした場合にも確かな効果が確認されています。
火傷によって皮膚が傷つくと、水ぶくれができたりとさまざまな損傷が現れてしまいますよね。
また傷ついた皮膚は細菌やウイルスが侵入しやすく、感染症を引き起こす原因にもなります。
しかし、ラベンダーオイルの主成分リナロールには抗菌作用があります。
たとえば火傷を負った場合は患部に精油を1滴塗ってみましょう。確かな変化を実感できるに違いありません。
細菌やウイルスを分解しながら、肌の組織を再生する働きがあるのは新鮮な驚きですね。同時にこの成分には鎮静作用があり、痛みもやわらげてくれます。
またリナロールの鎮静効果は、咄嗟のアクシデントや、高ぶった精神状態を解きほぐしてくれる効果も期待できるのです。
虫除け、抗菌・殺菌作用
中世ローマでは蚊やハエが寄りつかないようにラベンダーの花を部屋に吊るしたといいます。ラベンダーは虫除けとしても大変有効です。
また、水虫の原因となる白癬菌や、浴室やキッチンなどの湿気が多いところに発生しやすいクロカビ、書庫などに発生するカビなどのオールマイティな抗菌作用は心強い味方ですね!
免疫力を高める
免疫細胞を活性化するには?
免疫力は年齢を重ねるとともに低下する傾向にあるといわれます。
免疫力を高めるには、免疫細胞を活性化する以外に方法はありません。そこでクローズアップされるのがNK細胞と呼ばれるものです。
ナチュラル・キラー(natural killer)細胞は、全身をくまなくパトロールしながら、がん細胞やウイルス感染の細胞を発見すると攻撃を仕掛けます。
このNK細胞が免疫力を高めることに大きく関係しているといいます。
ラベンダー精油のトリートメント効果
免疫力について、ラベンダー精油を使った興味深い実験がありました。
ラベンダー精油を使用したトリートメントを、期間を決めて高齢者に継続的に実施することで、免疫力がどのように高まるかを調べたものです。
実施にあたり、高齢者48名に対して、ラベンダー精油を使ったアロマトリートメントを実施したグループが16名、ホホバ油のみで精油を使わないトリートメントを実施したグループが16名、トリートメントを実施しないグループを16名と分けます。
トリートメントを実施するグループは、3か月の間に毎週1回45分ずつ施術することにしました。
ラベンダー精油を使用したトリートメントが免疫機能に与える影響
【高齢者48名を3群に分けた実験】
◯A群
ラベンダー精油を使用したアロマトリートメントを実施 16名
◯B群
精油なし(ホホバ油のみ)でトリートメント実施 16名
◯C群
トリートメント実施なし 16名
【トリートメントの方法】
(A群、B群共通)
◯部位:背面・顔面および両下肢・両手
◯実施:週1回、45分間
◯期間:3カ月
◎測定項目
NK細胞活性値、脳波(α波)、心負荷係数(脈拍・血圧)
「『香り』を媒介としたケアによるストレス軽減と免疫賦活効果の検討」伊藤あづさ(日本味と匂学会誌,Vol.9 No.3,P.619-622,2002年12月)(公社)日本アロマ環境協会
すると下の図の結果のように、ラベンダー精油を配合したホホバ油を使用したトリートメントを2カ月以上続けて受けると(A群)、NK細胞活性値が明らかに上昇しました。
B群の精油なし(ホホバ油のみ)でトリートメント実施の場合は、平均値は上昇したものの、大きな変化は見られませんでした。
C群のトリートメントなしでは、逆に平均値が下がっていることにお気づきのことでしょう。
この実験からも、ラベンダー精油を使ったトリートメントを継続して行うと、NK細胞の活性値が上昇することがはっきりと確認できます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?「万能のアロマオイル」と呼ばれるラベンダーの魅力はやはり尽きることがないですね。
ラベンダーの魅力を以下にまとめてみましたので参考になさってください。
①深いリラックス効果
○自律神経を自然に整えてリラックスモードに導いてくれる作用
○不安を鎮め、心を穏やかにする作用
②安眠効果
○熟睡に導く作用
○医療機関や介護施設でも積極的に活用
③肌組織の再生・回復・保湿
○芳香蒸留水は希釈しないで化粧水として使える
○火傷、切り傷、擦り傷などの皮膚の損傷、炎症などに確かな効果
⑤虫除け、抗菌、殺菌作用
○抗菌作用が虫除けやカビの繁殖を防ぐ
⑤免疫力を高める
○ラベンダー精油を使った継続的なハンドトリートメントの実施により、免疫力が高まる