ときに「万病の元」とさえ言われるストレス。日常生活のさまざまな場面で襲いかかるストレスを避けるのはなかなか容易ではないですよね……。
けれども、ストレスを受けにくくしたり、受けたストレスに振りまわされない方法は間違いなくあります。ではダメージを極力少なくして、心身の健康を保っていく方法はどうしたらいいのかを見ていきましょう!

ストレスが身体に悪影響を及ぼす理由
現代では、ストレスが身体に悪いというのは誰もが充分認識していますが、それはどうしてなのでしょうか? そのあたりから見ていきましょう。

ストレスが身体に悪影響を及ぼしたり、病気の原因になりやすいのは、「自律神経」と「ホルモン」のバランスが崩れるからです。
簡単にいうと、ストレスがかかると 「闘うか逃げるか」 の二者択一の状態になってしまい、体が極度の緊張状態を強いられるようになります。これが長く続くと、さまざまな不調を引き起こすようになるのですよね。
特に免疫、自律神経、ホルモンバランスは、密接な関係を保ちながら健康体を維持する3つの重要な要素です。

健康体を維持する3つの要素
【免疫】身体の防御作用
◯ウイルスなどの異物から体を守る機能
◯病原微生物が侵入すると、免疫システムを稼動させて対抗する
【自律神経】活動とリラックス
◯臓器や血管など、体の全体を調整する機能
◯脳からの指令を伝達する神経のうち、自分の意思とは無関係に各器官を働かせている
【ホルモンバランス】生体バランスの調整
◯内分泌腺器官(脳下垂体、甲状腺、胸腺、膵臓、副腎、精巣、卵巣など)が分泌するホルモンによって、生体のバランスを調節する機能
これらの3つの要素は、独立して作用するのではなく、互いに影響し合いながら働いています。ストレスや心配事などが続くと、このバランスが崩れ、様々な体調不良が現れやすくなるのです。
ストレスを受けてから病気になるプロセス
ストレスを感じると、脳が「危険だ!」と判断し、交感神経(体を活動的にする神経)が働きます。これは、昔の人が野生動物から逃げるときに必要だった「戦うか逃げるか」の反応です。
ストレスを感じた時の体の反応
- 心臓がドキドキ → 血圧が上がる
- 呼吸が速くなる → 体に酸素を送る
- 筋肉が緊張 → すぐ動けるようにする
※この状態が短時間なら問題ありません。でも、長く続くと体に負担がかかります。
ストレスを受けると、「コルチゾール」というホルモンが出ます。ふだんは炎症を抑えたり、エネルギーを作ったりする良い働きがありますが、出すぎると逆効果になります。
ストレスホルモンが急増すると
- 免疫力が下がる → 風邪をひきやすくなる
- 血糖値が上がる → 生活習慣病のリスクが増える
- 太りやすくなる → 脂肪がたまりやすくなる
交感神経(戦闘モード)が長く続くと、逆に「リラックスモード」にする副交感神経がうまく働かなくなります。
自律神経が乱れると……
- 胃腸の調子が悪くなる(食欲不振・胃痛・便秘や下痢)
- 眠れなくなる(不眠・寝ても疲れが取れない)
- 頭痛や肩こり(血流が悪くなるため)

ストレスが長く続くと、体のあちこちに悪影響が出ます。リラックスする時間を作ることが、健康にとってとても大切なのは言うまでもありません。
上の図のように、熱いお湯に入ると眠れなくなったり、激しい運動をすると疲れを引きずるのは交感神経が優位な状態が続いているからなのです。
スポーツ後にクールダウン(軽いストレッチなど)を勧められたりしますが、それは疲労を残さないためなのですよね。
ストレスが原因で起こりやすい病気
ストレスが原因で起こりやすい病気には、実にさまざまな疾患があります。心身の不調を招きやすいだけでなく、病気の発症に大きな影響があるのがちょっと厄介なところですね。
以下におもなものを挙げてみました。
精神的な疾患
- うつ病:強いストレスが続くと、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、抑うつ状態に。
- 不安障害:慢性的なストレスが不安を引き起こし、パニック発作や強迫性障害を招くことも。
- 適応障害:特定の環境変化に適応できず、不安や抑うつが強まる。
自律神経の乱れによる疾患

- 自律神経失調症:ストレスによって交感神経が過剰に働き、めまい、動悸、倦怠感などが現れる。
- 過敏性腸症候群(IBS):腸の動きがストレスの影響を受け、腹痛や下痢、便秘を繰り返す。
- 緊張型頭痛:筋肉がこわばることで起こる頭痛。長時間のストレスで慢性化しやすい。
生活習慣病の悪化
- 高血圧:ストレスで血圧が上昇し、動脈硬化や心筋梗塞のリスクが高まる。
- 糖尿病:ストレスホルモンが血糖値を上げ、糖尿病の発症や悪化を招く。
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍:ストレスによる胃酸過剰分泌が原因。
免疫力低下による疾患
- 風邪・インフルエンザ:ストレスで免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなる。
- アレルギー症状の悪化:ストレスが免疫バランスを崩し、花粉症やアトピー性皮膚炎が悪化することも。
その他の疾患
- 円形脱毛症:強いストレスが免疫機能を狂わせ、毛根を攻撃することで髪が抜ける。
- 心筋梗塞・脳卒中:長期的なストレスが血管を傷つけ、心臓や脳の病気を引き起こす
ストレスを受けないようにする方法
ストレスを受けてもそれを軽減する方法は人によってそれぞれです。特に次に挙げる方法はストレスを遠ざける重要ポイントでしょう!
物事のとらえ方を変える

私たちは、同じ出来事でも「ポジティブに受け止めるか」「ネガティブに受け止めるか」で感じるストレスの大きさが変わります。例えば、「失敗した」と思うとストレスになりますが、「いい経験ができた」と考えると前向きな気持ちになれます。
具体例をいくつか見てみましょう!
ネガティブ思考 | ポジティブ思考 | |
仕事でのミス | 「またミスをしてしまった。自分はなんてダメな人間だ…」 | 「このミスをいい経験に、次はもっと良い仕事するぞ!」 |
電車の遅延 | 「こりゃ遅刻だ…最悪!」 | 「ちょっと時間ができた。この機会に本でも読もう」 |
友人からの返信が遅い | 「嫌われたのかな…きっとそうだ」 | 「きっと忙しいんだな、気長に待とう」 |
職場の異動 | 「新しい場所でやっていけるかな。ちょっと不安」 | 「新しい経験ができるチャンス。成長できそう!」 |
雨の日の外出 | 「せっかくの休日なのに、最悪の天気…」 | 「雨音を楽しみながら、のんびり過ごそう」 |
このように、同じ出来事でも視点を変えることでストレスの感じ方が大きく変わります。
考え方を少しポジティブにシフトするだけで、心の負担を軽減できますね。 考え方のクセを見直し、ストレスを軽減する習慣をつけましょう!
生活リズムを整える
ストレスに強い心と体をつくるためには、まずは健康的な生活習慣をつくっていくことが大切です。
良質な睡眠
睡眠とストレスは深い関係があります。睡眠不足は、集中力や生産性を低下させるだけでなく、ストレスへの耐性も下げてしまうでしょう。ストレスが睡眠障害を引き起こすこともあるので要注意ですね!
睡眠中は、脳が休息し、記憶の整理や感情の処理が行われます。なぜ十分な睡眠が必要なのかというと、ストレスによって高ぶった神経を鎮め、心身がリラックスするからなのです。睡眠によるリセットが必要なのはこの理由からなのです。

バランスの取れた食事
食事を見直すのことは健康面はもちろん、ストレス緩和にも大いに役立ちます。逆に加工食品、インスタント食品などは体不調を招いたり、ストレス誘発の要因になりやすいので注意が必要でしょう。
ストレスを溜めやすい食べ物
- 加工食品やインスタント食品 : 栄養バランスが偏りやすく、添加物も多い
- 過剰なカフェインやアルコール : 睡眠の質を低下させ、ストレスを増幅させる
- 高脂肪・高糖質の食品 : 血糖値の乱高下を引き起こし、精神状態を不安定にする
⇩
ストレスを抑える食べ物
- ビタミンB群 : 豚肉、レバー、玄米など
- ビタミンC : 柑橘類、イチゴ、ブロッコリーなど
- マグネシウム : ナッツ類、海藻、大豆製品など
- カルシウム : 乳製品、小魚、緑黄色野菜など
- トリプトファン : 乳製品、大豆製品、ナッツ類など
- 食物繊維 : 野菜、果物、きのこ類、海藻類など

適度な運動

身体をモーレツに動かしたり、痛めつけるほどの運動は、オーバートレーニング症候群を引き起こす可能性があります。これは、疲労、睡眠障害、食欲不振、気分の落ち込みなどの症状を伴うようになるかもしれません。
運動は自分の体力や体調に合わせて、無理のない範囲で行うことが大切ですね。中でもウォーキングやストレッチなどは血流をよくし、リラックス効果が得られるようになるでしょう。特に息が少し弾み、汗ばむ程度の有酸素運動は有効ですね。
環境を整える(ストレス源を減らす)
ストレスを感じやすい環境にいると、無意識のうちに精神的・肉体的負担が増えてしまいます。それを防ぐには日々の生活環境などを見直すことがとても大切です。いっしょに見ていきましょう!

人間関係を見直す

相性が良くない、考え方がまったく違う人など、距離を置いたほうがいい場合には、無理に関わらないほうが無難でしょう。
特に真面目な人や律儀な人は、関係を一時的に断ったり、その場を離れることに罪悪感を感じてしまいやすいです。しかし、そのことで自分が強いストレスを感じたり、心が崩壊してしまってはどうにもなりません。
遠慮せず距離を置くことも賢い選択かもしれませんね。
情報の取捨選択

現代はネット上やSNS、Webニュースなどで、好むと好まざるとにかかわらず、さまざまな情報が五感を通して入ってきます。
こういう時代だからこそ情報の取捨選択は重要です。不必要な情報は人の心をかきまわし、疲弊させます。ネガティブな情報、不必要、雑多な情報は触れないようにするか、できるだけ切り捨てるようにしましょう。
Webやブラウザの設定でシャットアウトすることも必要になるかもしれませんし、ときにはデジタルデトックスを考えてもいいでしょう。

リラックスできる空間をつくる

リラックスできる空間を作ることは、ストレスを抑える上で非常に効果的です。
視覚、聴覚、嗅覚、触覚など、五感に心地よい刺激を与えることで、心身の緊張がやわらぎます。たとえばアロマの香りを嗅いだり、好きな音楽を聴いたり、落ち着いた照明に変える、柔らかな素材に包まれることなどは、リラックス効果を高めるでしょう。
リラックス空間を作るメリット
- 心身の鎮静化 : 視覚、聴覚、嗅覚、触覚など、五感に心地よい刺激を与えることで、心身の緊張が和らぐ
- 心理的安定 : 自分だけの安心できる空間を持つことで、心理的な安定感が得られる。好きなものに囲まれた空間や、落ち着ける色合いで統一された空間は、心の安らぎにつながる
- ストレスホルモンの抑制 : リラックスすることで、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑制される
強いストレスを受けたときの対処法
ときには人間関係のいざこざなどで立ち上がれないほどのショックを受けたり、強いストレスが残る場合があります。こんなときはどうしたらいいのでしょうか? 有効策として次の対策法を挙げておきますね。
深呼吸(リラックスのスイッチを入れる)

ストレスを感じたときは、たいてい呼吸が浅くなりやすいと言われますよね。
そのときは深くゆっくり息を吸って、長く吐くことで、副交感神経が働くようになり、気持ちも自然と落ち着きます。ぜひとも「4秒吸う → 7秒止める → 8秒かけて吐く」 を試してみてください。
「4秒吸う → 7秒止める → 8秒かけて吐く」は、4-7-8呼吸法と呼ばれるリラックス効果のある呼吸法なのです。
4-7-8呼吸法の手順
- 楽な姿勢で椅子に座る
- 鼻から4秒かけて息を吸う
- 息を止めて7秒数える
- 口から8秒かけて息を吐く
- 1〜4までのサイクルを最大4回繰り返す
体を動かす(ストレスホルモンを減らす)
運動すると「セロトニン」や「エンドルフィン」といった幸福ホルモンが分泌され、ストレスが少しずつやわらぎます。
軽い散歩やストレッチでもOK!特に汗ばむ程度の有酸素運動は非常に有効です。何も考えず長時間歩くことも有効でしょう。
ストレスホルモンを減らす運動
- 自分の能力の5割程度の強度で運動する。つまり軽く汗ばむ程度
- 汗ばむ程度の運動を、1回15分から20分かけて週3回くらい行う
- 平日に時間が取れない場合は、週末に1回60分の運動を取り入れる
- 好きなスポーツがある人は定期的に続けるとよい
気持ちを吐き出す(感情を整理する)

ストレスをため込まずに発散すること、思い切り感情を開放することも大切です。特に泣いたり、笑ったりすることは気分がスッキリするし、気持ちをリセットしてくれます。
日記に書くのもいいかもしれませんね。書き出すことで自分の気持ちが整理されるようになるでしょう。
次のような例は気持ちを吐き出せるし、前向きな気分にさせてくれることでしょう。
気持ちを吐き出す
- 自分の感情を表現する
- 思い切り泣く、笑う
- 信頼できる人に話す(共感してもらうだけで気分が軽くなる)
- 日記を書く(紙に書き出すことで、ストレスの正体が整理される)
「今ここ」に集中する(マインドフルネス)

過去の失敗や未来の不安にとらわれると、ストレスが増大してしまいます。ともすれば自分で不安やストレスの原因の種を増幅させてしまっているといえるでしょう。
しかし、今この瞬間に意識を向けることで、ストレスを手放しやすくなります。
このような「心ここにあらず」の状態から脱却して、心を”現在”にしっかり根づかせることで、豊かに味わい体感する状態を「マインドフルネス」といいます。

ささやかな「喜び」を見つける
ストレスがあるときほど、ささやかな喜びを見つけることが大切です。生活で気軽にとり入れられそうな「小さな幸せ」「ささやかな喜び」をぜひとも見つけていきましょう!
ささやかな「喜び」を見つける
- 趣味を徹底的に極める
- 美味しいものを食べる
- 好きな音楽を聴く
- 好きな映画を見る
- アロマやハーブティーで癒される
- 月2回は温泉旅館やスパなどにこもる…他
ストレスの渦に巻き込まれそうになったら、「自分が心地よくなれること」をとにかく意識して取り入れてみてください。そうすることで気持ちが楽になったり、今まで気づかなかった発見をすることもあるでしょう。

まとめ
いかがでしたでしょうか? ストレスは無意識のうちに心身に襲いかかってくるもの。
「ストレスを感じないようにする」というよりも、ストレスを感じたとしても、それを恐れず対処するほうがストレス軽減にはずっと効果的です。むしろストレスを感じたとしても、それを成長するための試練と捉えるほうがいいかもしれませんね。
そうすることで、これまでストレスと思えたことが、そうでなくなったというのはよくあることです。ぜひともストレスは正しく恐れながらも、的確に対処していきましょう!